埼玉県の新型コロナウイルス対応を検証する県議会の特別委員会が29日、初の閉会中審査を開き、流行の第2波を見据えた医療提供体制の整備や経済対策をめぐる審議が始まった。特別委設置を主導したのは県議会最大会派の自民党議員団だ。昨年8月の知事選で与党系候補と争った大野元裕知事に対するチェック姿勢をアピールし、「野党県政」の中で埋没しがちな存在感を高めたいという思惑も透ける。
「県による人災ではないか!」
トップバッターとして質問に立った横川雅也氏(自民)は、軽症と診断された県内の男性2人が自宅待機中に死亡した問題を取り上げ、県の対応を批判した。
県は当初、1人目の死亡者について自宅待機中だったことを公表していなかった。横川氏は、県が適切に情報を公開していれば2人目の死亡は避けられた可能性があると主張した。
県の担当者が「反省材料として受け止めたい」と答弁すると、別の自民党県議からは「今さら反省してどうするんだ」とヤジが飛んだ。
荒木裕介氏(自民)は感染の有無を調べるPCR検査の体制について質問し「後手に回った感が否めない。国の基準はあったが、県独自の基準を打ち立てるべきではなかったか」と迫った。県側は「検査の準備が遅れたのは事実だ」と答え、対応の不備を認めた。
自民党が執行部への批判を強める背景には、新型コロナウイルス対応で連日メディアに露出する大野知事への対抗心がある。大野氏は知事選で、立憲民主、国民民主、共産、社民の4野党の支援を受け、自民、公明両党の推薦候補らを抑えた。
「有権者の最大の関心はコロナだ。だが、対応は県が主役を占め、地元で『議員は何をやっているんだ』と怒られることもある」と明かすのは、県議OBでもある自民党県連関係者だ。「特別委で県の方針をただし『議会ここにあり』を示さねばならない」と鼻息は荒い。
特別委の委員長を務める自民党議員団の小島信昭団長は29日の委員会後、記者団に「今の時期に検証することは、早く収束させる要素となる。有意義な委員会だった」と胸を張った。
一方、傍聴した立憲民主党県議の一人は「県の対応が後手に回った部分はある。しかし、自民党の追及には『知事たたき』ありきという姿勢が透けてみえる」と不満を口にした。
特別委は今後も閉会中審査を重ね、9月までに県に対する提言書をまとめる予定だ。(竹之内秀介、中村智隆)