新型コロナウイルスの感染防止のため、密閉・密集・密接の「3密」を避けようと、移動手段を電車などの公共交通機関から自転車に切り替える人が出てきている。シェアサイクルの利用者が増える一方で、6月末までの自転車の違反取り締まり件数は昨年同期よりも増加しており、利用者のモラルも問われている。(吉沢智美、大渡美咲)
■運動もかねて
「新型コロナウイルスが流行してから、通勤を電車から自転車に変えた。電動自転車なので、遠くまで行くことができるし、スピードも出るので快適」
東京都内で働く男性(35)は4月以降、電車通勤をやめ、自宅近くにあるシェアサイクルで通勤している。運動もかねてほぼ毎日利用しているという。
運営しているドコモ・バイクシェアによると、3月に比べ、4、5月は新規会員数が2割増加。緊急事態宣言解除後は、3月よりも利用回数が増えているとし、「新型コロナの影響でこれまで自転車を利用していなかった人が外出や買い物に利用しているのでは」とする。
au損害保険が都内在住の自転車通勤者500人を対象に行ったアンケートによると、新型コロナ流行後に自転車通勤を始めた人は23%。そのうちほぼ全員が「公共交通機関での通勤を避けるため」と回答した。
自転車産業振興協会の5月の調査月報によると、5月の1店舗当たりの平均販売台数は前年と比べてほぼ変わらないものの、「新型コロナウイルス感染症の影響で、電車・バスの利用を避けるために自転車を購入する人が増えた」「遠出ができずサイクリングする家族などで修理も多かった」という声も紹介されている。
■首都高を走行
自転車の人気が高まる一方で、事故や交通違反、利用者のマナー違反も目立つ。不特定多数の人が共同で使うシェアサイクルのかごに、マスクやペットボトルなどのごみを捨てるケースや、駐輪禁止区域への駐輪なども少なくない。警視庁によると、6月末現在の自転車の交通違反取り締まり件数は1303件(前年同期比343件増)。うち信号無視は652件、踏切立ち入りは457件にも上る。