【李登輝氏死去】習近平氏の野望を阻んだ「台湾人意識」 尖閣は「日本のもの」と公言





名古屋空港に降り立ち、車の中から手を振る台湾の李登輝前総統(当時)=2004年12月27日

 【北京=西見由章】中国の習近平国家主席は台湾に「一国二制度」の受け入れを迫っているが、その台湾統一の野望を阻む最大の砦(とりで)は、李登輝氏が総統時代に政治改革や教育政策などを通じて確立させた台湾人意識だ。台湾の主体性を重視するこの意識は今や党派を超えた台湾民意の主流となり、李氏の死去で揺らぐことはなく、習指導部に残された手段は限られている。

 台湾統一は習氏が掲げる国家目標「中華民族の偉大な復興という中国の夢」の中核だ。だが2012年の習指導部発足以降、台湾独立志向の民主進歩党を率いる蔡英文氏に二度の総統選当選を許すなど台湾政策の成果は乏しい。特に今年1月の総統選は、香港への統制強化が台湾社会に一国二制度への不信感を募らせる結果となり、中国側の“オウンゴール”に終わった。

 焦りを隠せない習指導部は5月、党序列3位の栗戦書政治局員が、台湾独立の動きがあった場合に武力行使することを規定した「反国家分裂法」に基づく軍事力の発動を示唆した。

 中国が武力侵攻に踏み切る可能性はあるのか。李氏は18年10月、産経新聞の取材に「米国がどの程度関与してくるかは不明で(台湾も)過大な期待を持つべきではない」としつつ、中国側にもリスクは大きいとの見方を示した。北京の中国人ジャーナリストも「もし台湾側に三峡ダムを爆撃されたら下流の江蘇省や浙江省は水没する」と指摘し、習指導部が政治的賭けに出る可能性は低いとみる。

 李氏は総統退任後、台湾を「正常な国家」とするための新憲法制定を掲げ、中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)も「日本のものだ」と公言。中国の左派を「現代最大の漢奸(かんかん)だ」(中国紙・環球時報電子版)と逆上させた。中国ではこうした批判の声が大勢を占める一方、改革派の中には「台湾の民主改革を穏健に実現した」(北京の政治学者)と評価する声もある。



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