「ポスト安倍」を狙う自民党の岸田文雄政調会長が地方行脚に本腰を入れ始めた。31日に熊本県で新たに立ち上げた地方後援会の設立会合に出席したほか、今後も各地で後援会づくりを加速していく。党総裁選は党員票の行方も勝敗の鍵を握るが、ライバルの石破茂元幹事長は地方に強い支持基盤を持つだけに、岸田氏もコツコツと足場固めを進めたい考えだ。
岸田氏は総裁選を意識したかのような動きを活発化させている。
7月30日には東京都内のホテルで安倍晋三首相と3月18日以来、約4カ月ぶりに会食した。肉料理をつまみ、ビールグラスを傾けながら、総裁選や党役員人事、衆院解散・総選挙の時期などについて意見を交わしたという。会食は岸田氏が持ちかけた。
会食後は、二階俊博幹事長が出席する別の会合にも顔を出し、党内で存在感のアピールにも余念がない。
この一方で、課題となっているのが地方での知名度不足だ。石破氏はかねて地方での選挙応援や講演活動に力を入れており、首相と一騎打ちとなった平成30年の前回総裁選では、党員票で約45%の得票率を得た。
首相が月刊『Hanada』9月号のインタビューで「(ポスト安倍の)有力な候補者の一人」と持ち上げた菅義偉(すが・よしひで)官房長官も7月、新型コロナウイルス対策の合間を縫って北海道を訪れた。いずれもメディアでの露出が多く、地方での知名度も高い。
次の総裁選で岸田氏の党員票が伸びなければ、議員票で優位に立ったとしても「選挙の顔として厳しい」という党内世論を呼び起こしかねない。
岸田氏は7月27日の記者会見で「東京の過度の密集(の解消)、あるいは地方の活性化を果たしていく」と語るなど、地方政策を重視する構えを強調した。8月も、名古屋市で開かれる地方後援会の会合に顔を出す予定だ。岸田派(宏池会)では、岸田氏を支援する首長がいる自治体を訪問する計画もある。
岸田派の中堅議員は「岸田氏に現状を知ってもらうため、地方を歩き回ってほしい。支持はおのずと副産物としてついてくる」と語った。(永原慎吾)