習近平国家主席率いる中国共産党政権は、自由主義陣営の包囲網構築に狂乱反発しているのか-。沖縄県・尖閣諸島周辺では13日朝時点で、中国海警局の公船2隻が、国有化以降最長となる領海侵犯を続けている。中国国内では「台湾のスパイ」による事件数百件を摘発した。東京で6日、中国の軍事的覇権拡大に対峙(たいじ)する、日本と米国、オーストラリア、インドの「4カ国外相会談」が開催されたうえ、台湾の蔡英文総統が10日、「双十節」(建国記念日)の演説で、「主権と民主主義を堅持する」と強調したことなどに憤慨しているのか。力で押さえ付ける「戦狼外交」「恫喝(どうかつ)外交」では、世界の理解は得られない。
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第11管区海上保安本部(那覇)は13日午前、尖閣諸島周辺で、11日午前に領海侵犯した中国海警局の公船2隻が領海内にとどまっていることを確認した。7月に記録した連続滞在39時間23分を13日午前2時11分ごろに超え、2012年9月の尖閣国有化以降、最長となった。
領海の外側の接続水域でも同日、別の中国公船2隻が確認された。うち1隻は機関砲のようなものを搭載していた。
領海侵犯した公船2隻は11日午前、尖閣諸島・大正島沖で操業中だった日本漁船に接近した。海保の巡視船が間に割って入り、漁船の安全を確保したが、現場海域は緊迫化した。
中国は、台湾にも圧力をかけてきた。
中国国営中央テレビは11日、国家安全当局が、香港の民主化運動を支援した台湾人を「スパイ」とみなし、数百件もの事件を集中的に摘発したと宣伝する番組を放送した。
番組によると、香港に隣接する広東省深●(=土へんに川)市の当局が昨年8月、台湾人男性を拘束した。「香港のデモ隊を威嚇するために集結した中国の武装警察を盗撮し、香港のデモを扇動した」という国家安全危害容疑で、台湾人男性は「申し訳なかったと思う」と番組で公開謝罪した。
中国はオーストラリアも狙った。
中国外務省の趙立堅副報道局長は12日の記者会見で、中国出身のオーストラリア人作家、楊恒均(別名・楊軍)氏を、北京市人民検察院が7日、スパイ活動の罪で起訴したと発表した。
一連の好戦的な外交姿勢は「中国包囲網」への反発とみられる。「自由・民主」「人権」「法の支配」という基本的価値観を共有する自由主義陣営は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、軍事的覇権拡大を進める中国への対抗姿勢を強めている。
日本と米国、オーストラリア、インドは6日、東京で「4カ国外相会談」を開催した。4カ国は、「自由で開かれたインド太平洋」戦略で一致し、「QUAD=クアッド(日米豪印戦略対話)」を推進している。
マイク・ポンペオ米国務長官は同会談で、「4カ国の外交協力を他国にも広げ、インド・太平洋地域に多国間安全保障の枠組みを作るのが望ましい」と語った。明らかに対中国が念頭にある。
台湾の蔡総統は10日、双十節の演説で、「中国当局が両岸(中台)関係を改善させる考えがあるなら、意義のある対話をしたい」と、習政権に呼び掛ける一方、「(台湾の)主権と民主主義を堅持する原則は不変だ」といい、自由主義陣営に残る決意を示した。
中国共産党政権は、これらに激怒しているのか。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国の動きは、4カ国外相会談に刺激を受けたものといえる。欧州でも、中国外交は失敗続きだ。その不満を、外にぶつけている」と分析した。
中国の「戦狼外交」「恫喝外交」への怒りをあらわにする声もある。
評論家の石平氏は「日本に領海侵犯を繰り返し、台湾の蔡政権に圧力をかける。あまりの暴挙で、許せない動きだ。もはや戦略的に冷静さを失っており、合理的に理解するのも無理だ。このまま習氏が国家主席に居座る限り、覇権的な動きは止まらない。国際社会は毅然(きぜん)と対応すべきだ」と語っている。