菅政権が韓国への厳しい姿勢を鮮明にしている。元徴用工問題に関し、韓国政府が日本企業の資産売却をしないと確約しない限り、菅義偉首相の訪韓は困難だと伝えたのだ。韓国が議長国を務める今年の日中韓首脳会談の開催は見通せなくなった。
一方で菅政権は、経済再生や北朝鮮対応の面から、実利面での関係修復を進めており、元徴用工問題を動かす糸口になると見る向きもある。日韓関係改善の契機となるのか、悪化したままにとどまるのか、この先数か月の対応で方向性が見えてきそうだ。韓国候補が最後の2人に入った世界貿易機関(WTO)事務局長選を巡る判断も注目される。(共同通信=内田恭司)
▽安倍前政権の方針を引き継ぐ
日本政府関係者によると、「訪韓拒否」の経緯はこうだ。韓国での元徴用工訴訟で敗訴が確定した日本製鉄(現)の資産差し押さえに関し、同社に通知が届いたとみなす「公示送達」の効力が8月4日に発生した。このため当時の安倍政権内で対応を検討。現金化はしないとの政府保証がなければ、訪韓はできないとする対処方針を固めた。