「使ってはならない兵器に存在理由ない」 核禁条約発効へ 生まれた「許さない」包囲網


「使ってはならない兵器に存在理由ない」 核禁条約発効へ 生まれた「許さない」包囲網

 「国際法によって核兵器が違法になる。うれしいし、興奮している」。核兵器禁止条約の発効に向けて取り組んできた国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)国際運営委員の川崎哲さん(51)は25日朝にオンラインで記者会見し、喜びをあらわにした。

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 川崎さんは会見で「使ってはならない兵器に存在理由はない」と強調した。地雷やクラスター弾などの禁止条約発効が、条約に参加していない国にも影響を及ぼしてきた歴史を踏まえて「政治的、経済的、社会的に核兵器を許さないという包囲網が生まれている。使うことが許されないものをいつまで持っているのか。冷静な指導者であればやめようという選択をするしかない」と語気を強めた。

 今後は条約発効から1年以内に具体的なプロセスを協議する締約国会議が始まる。川崎さんが共同代表を務めるNGO「ピースボート」は被爆者の証言をオンラインで世界に伝えていく予定で「この会議を本当の意味で核兵器の終わりの始まりにするために改めて核兵器の非人道性を人間の生の声で伝える取り組みをしていきたい」と思いを新たにしていた。

 ともに会見した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局長の木戸季市(すえいち)さん(80)は「あの日を思い出した」と述べ、長崎に原爆が投下された翌日に爆心地付近で目にした惨状を振り返りながら訴えた。「本当に街が真っ黒だった。道路に死体がゴロゴロし、川には水を求める人がいた。被爆者はあのとき、全く予想できなかったことに直面した。もう理屈ではない。それが核兵器をなくせ、再び被爆者を作るなという私たち被爆者の願いの出発点だ」

 木戸さんは被爆の悲惨さを身をもって知る国でありながら、条約に批准しない立場を取る日本の政府に厳しい目を向ける。「あの戦争と、原爆がもたらしたものをきちんと考えれば今のような態度は取れない。これからが本当に(核兵器の)終わりの始まり。そのために最後の力を振り絞ろうと思っている」と語った。

 条約の早期発効を求める署名活動「ヒバクシャ国際署名」の呼びかけ人で、日本被団協代表委員の田中熙巳さん(88)は取材に対して「長い間やってきたことがやっと実った」と声を弾ませた。

 日本被団協の事務局長を通算20年務め、悲願とする核兵器廃絶に向けて国際会議などで仲間とともにその非人道性を訴えてきた。国際署名は「生きている間に核兵器のない世界を実現したい」と2016年にスタート。翌17年に条約が採択されると、早期発効を求めて国内外で協力を呼びかける日々が続いた。

 田中さんは核兵器廃絶に一歩前進した意義をかみしめ「条約で核兵器を禁止しなければダメだと考えてきた50年だった。廃絶にはまだ大きな山があるが、禁止条約の発効は大きい。日本政府を批准する方針に変えさせるために運動していきたい」と語った。【椋田佳代】



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