ドナルド・トランプ氏の2期目政権において、アメリカ政府が民間ビジネスへの関与を異例なほど強めている。最近報じられたエヌビディア(NVIDIA)とAMDへの「中国向けチップ販売収益の15%上納金」要求は、その顕著な例だ。これは、トランプ氏が従来推進してきた「国内製造を促すための関税」という政策とは一見矛盾するようにも見えるが、彼の「トランプ2.0」と呼ばれる新しいアプローチ、すなわち連邦政府が民間企業へ深く介入するという傾向と完全に一致している。この動きは、かつて社会主義国や国家統制が強いとされる中国でしか見られなかったような政府と企業の関係を、アメリカでも現実のものとしつつあると指摘されている。
「政府の許可が必要な国」へ:広がる介入の兆候
あなたが、民間企業がビジネスを行うのに政府の許可が必要な国に住んでいると想像してほしい。過去の旧ソ連や現代の中国を思い浮かべるかもしれないが、2025年の第二次トランプ政権下のアメリカが、まさにその様相を呈し始めていると指摘する声がある。例えば、先日トランプ氏はインテルのCEOに対し、過去の中国とのビジネス上のつながりを理由に辞任を要求した。また、6月には日本製鉄によるUSスチール買収計画を承認した際も、アメリカ政府が工場閉鎖などの一部の行動を承認または拒否する権限を持つ「黄金株(ゴールデンシェア)」を同社に付与するよう求めた。さらに1月には、TikTokのアメリカ事業の一部をアメリカ政府が所有するというアイデアも打ち出されている。
半導体分野の「上納金」要求の詳細
そして今、最も注目されているのが、エヌビディアとAMDが中国へのハイエンドチップ販売による収益の15%を米政府に引き渡すよう要求されている件だ。これはフィナンシャル・タイムズが最初に報じたもので、エヌビディアは「世界市場への参加についてアメリカ政府が設定するルールに従う」と声明を発表しているものの、この具体的な取引については直接言及していない。AMDとホワイトハウスからのコメントはまだない。これらの個々の取引については賛否両論の議論が可能であり、特に中国へのアメリカ製チップ販売は、トランプ政権内でも意見が分かれる問題だった。しかし、これらの事例を総合的に見れば、「トランプ2.0」政権が連邦政府を民間ビジネスに深く介入させる意向であることに疑いの余地はない。ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムニスト、グレッグ・イップはこれを「国家資本主義、つまり国家が名目上は民間企業の決定を導く、社会主義と資本主義のハイブリッド」と呼んでいる。
ドナルド・トランプ元大統領の肖像。彼の2期目の政権下で、米政府が民間ビジネスへの介入を強化し、特に半導体企業への「上納金」を要求している様子を象徴。
矛盾と混乱を孕む政策:半導体輸出規制の異質性
特に半導体に関する今回の「上納金」要求は、その政策が混乱を極めている点でも注目される。トランプ氏が今年推進してきた関税計画の前提と「逆転」しているためだ。従来の関税は、海外で製造され米国に輸入される商品に課税することで、企業にアメリカ国内での製造を促すことが主な目的だった。しかし、今回の半導体チップに関する要求は、アメリカ企業によってアメリカで製造された商品、つまり彼が本来もっと見たいはずのものに対して課税している形となる。ドナルド・トランプ氏が言うこととやることが異なるのは今に始まったことではないが、彼の二期目の大統領就任から半年が経った今、共和党が支配する議会が彼にほぼ何でもやらせる状況は、もはや驚くべきことではない。
結論
ドナルド・トランプ氏の2期目政権下で進められている民間企業への介入強化は、これまでアメリカが掲げてきた自由市場経済の原則に一石を投じるものと言える。特に半導体分野での「上納金」要求や、インテル、USスチール、TikTokなどの事例は、政府が企業の経営判断に直接的、間接的に影響を及ぼす「国家資本主義」的アプローチが深化していることを示唆している。これらの政策には一部矛盾も見られるが、共和党が優勢な議会のもと、この傾向はさらに加速する可能性が高い。世界経済、特に日米関係や米中関係に与える影響は計り知れないだろう。
参考文献
- フィナンシャル・タイムズ (Financial Times)
- ウォール・ストリート・ジャーナル (Wall Street Journal)
- Peter Kafka, Business Insider (執筆者による記事)
- Yahoo!ニュース (記事掲載元)