大阪市を分割した四つの自治体の行政コスト「基準財政需要額」について、現状と分割後を比較した市財政局の試算は、都構想の実現で誕生する4特別区の財政運営に懸念を生じさせる結果となった。新たに表面化した218億円の行政コストを各政党はどう受け止めたのか。
【図解でわかる大阪都構想】
都構想の制度案を議論する計37回の法定協議会で、自民は独自試算として毎年の行政コストが約200億円増えると指摘し、府市の副首都推進局に資料の作成を求めてきた。しかし、法定協で多数派を占める大阪維新の会などはこれに応じず、実現しなかった。財政局が試算した行政コストは、自民が指摘した数字に近い数字となった。
維新代表の松井一郎大阪市長は、報道陣に「特別区は(需要額を算出する)係数が定まっておらず、計算できないため、(実際の事業の)リアルな数字を積み上げて長期的に財政が成り立つことを示した」と話し、財政上の懸念はないとの認識を示した。
維新とともに都構想に賛成する公明市議団の西崎照明幹事長は「行政コストは協定書とは違う話。住民投票で可決されたら、(特別区になる)2025年1月以降も住民サービスが維持されるよう党として主張していく」と話した。
一方で特別区の行政コストを独自試算した自民の川嶋広稔市議は「全てオープンにして堂々と議論すべきだったのに、副首都推進局はなぜ数字を出してこなかったのか。本来は法定協で取り上げてほしかった」と憤った。
同じく反対する共産市議団の山中智子団長は「松井市長が計算するよう指示を出して、市民に説明を尽くし、それでも大阪市を廃止・分割するのかを市民に問うべきだった。多くの市民に特別区の本当の姿を知っていただきたい」と話した。【矢追健介、田畠広景、野田樹】