山口県が貴賓車兼県議会議長車として、トヨタの最高級車「センチュリー」を購入したことについて、村岡嗣政知事は27日の定例記者会見で、8月の納品前まで詳細を知らなかったとし、「検討が十分でなかった」と反省の弁を述べた。26日現在で県に175件の批判の電話やメールが寄せられたという。
【センチュリーってどんな車?内装は?】
県によると、報道後の9月以降、担当の物品管理課の電話が鳴りやまなくなった。「センチュリーでないといけないのか」「新型コロナウイルス対策に充てるべきだ」と公費の使い方に疑問を投げる指摘が多く、「貴賓車に格式は必要」といった賛意は9件だった。
購入予算は2020年度当初に計上したが、村岡知事は会見で「県民に対する事業でなく、内部経費。担当課が検討したと思う」と予算編成段階は特に報告や指示はなかったと説明。20年度予算を審議する県議会でも議論されなかった。
県は「毎年度多額の財源不足が生じる構造」(行財政構造改革実施方針)で、新型コロナ対策がかさみ、21年度予算も現段階で70億円の財源不足が見込まれる。村岡知事は「他車種との検討など精査が必要だった」と顔をこわ張らせた。一方で、「いろんな意見を受け止め、しっかり運用していく」と述べ、売却などはせず使い続ける意向を示した。
県の事業を巡っては、8月に当時の安倍晋三首相の在任最長を祝う横断幕(制作費22万円)を掲示した際に170件、9~10月に安倍氏らを紹介する「総理大臣展」(開催費196万円)で30件の批判があった。県議会では議長を始め、自民が多数を占めている。鹿児島大の平井一臣教授(政治学)は「首相を輩出した自民党と県が構造的につながりが強くなり過ぎ、世論の多様性への感度が低くなっているのではないか」と指摘している。【降旗英峰】