大阪市を廃止し、4特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票(11月1日)が迫る中、福岡市や北九州市など同じ政令指定都市の自民党市議が大阪市に乗り込み、反対の訴えを繰り広げている。大阪市の消滅の危機は「対岸の火事ではない」(福岡市議)。政令市議の存在意義を脅かしかねず、警戒感を強めている。
【データ】大阪都構想、有権者の声
「大阪市をなくしたらいかんですばい」「あさっては反対を書くんだべ」。30日午前、大阪市阿倍野区のスーパー前で、博多弁と宮城弁が響いた。自民党大阪市議団の街頭演説に、福岡、北九州、仙台の3市議団の議員9人が参加。福岡の阿部真之助市議会議長は通行人に「それぞれの地域にそれぞれの自治がある。反対を書くことが大阪の自治を守ることになる」と訴えた。
今回の住民投票で、福岡や北九州の市議団が大阪入りするのは2度目。全国から他に13の政令市の自民党議員が応援に駆けつけ、さながら都構想賛成派と、反対する政令市議団による全面対決の様相だ。
全国から議員が集結するのは、党内事情がある。党大阪府連は都構想に反対するが、党総裁の菅義偉首相は都構想を推進する日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)と親交が深く、「二重行政の解消と住民自治の拡充を図るものだ」と理解を示す。党本部は静観の構えだ。
こうした状況に危機感を募らせたのが、政令市の自民党議員でつくる「政令指定都市議会議員連盟」だ。会長は大阪市議団の木下吉信市議。議連は全国に応援を要請し、木下氏は「他の政令市の議員が『政令市になって行政サービスが上がった』と訴えることが大阪市民に響いている。援軍はありがたい」。
住民投票で賛成が反対を上回れば、史上初めて政令市がなくなることになる。東京(23区)、大阪、名古屋の三大都市で政令市は名古屋市だけとなり、国に対する政令市の影響力の低下は避けられない。大阪に入った北九州市の井上秀作市議は「大阪市は他の政令市をけん引する機関車。消滅すれば影響は計り知れない」と話す。