新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛などを促す緊急事態宣言が発令された影響で、一時減少傾向にあった特殊詐欺の「予兆電話」が再び目立ち始めている。埼玉県内で最も詐欺被害の多い警察署の一つ、越谷署は、専門の捜査チームを作り、被害者から金品を受け取る「受け子」の検挙に力を入れている。
東武伊勢崎線の北越谷駅西口。上下スーツ姿でネクタイを緩めた男が、左手に荷物で膨らんだバッグを持ち合わせている。「不審だ」。同署地域課の福島一輝巡査(24)は、男の格好から直感した。男のバッグの中から、スーツに着替える前の服のほか、予兆電話をかけたとみられる家のリストが見つかった。
越谷署では今年に入り、10月28日までに43件の特殊詐欺被害が発生し、被害額は1億円を超える。同署は各課から署員を集め、特殊詐欺に対する専門チームを結成。戸別訪問や現金自動預け払い機(ATM)付近の警戒、不審な人物への職務質問を強化している。
福島巡査は普段、制服姿で交番に勤務するが、専門チームとしては私服で警戒にあたる。チームに加わったのは7月だが、8月中には受け子3人の検挙に貢献した。福島巡査は「服装に乱れがあったり、携帯電話をずっと触ったりする人物には声をかける」という。携帯電話を見せてもらい、受け取り場所を検索したとみられる形跡がある場合などは、鋭く切り込む。
県警特殊詐欺対策室によると、コロナによる外出自粛で、家に高齢者以外の家族がいることが多かったためか、予兆電話の件数は4月は727件(前年同月比841件減)、5月は591件(同612件減)と、例年の半分程度だった。しかし、6月に入ると件数が増え始め、県警は受け子の検挙に力を入れ始めた。
同室の担当者は「受け子を検挙することで、被害を間一髪で防ぐこともできる。予兆電話があれば受け子がいる可能性が高いので、すぐに通報してほしい」と呼びかけている。