立皇嗣(りっこうし)の礼が行われる8日は、中心儀式である午前中の「立皇嗣宣明の儀」の後、皇太子の守り刀として代々皇室に伝わる「壺切御剣(つぼきりのぎょけん)」を天皇陛下が秋篠宮さまに授けられる皇室行事がある。非公開で限られた人だけで行われ、刀が多くの人の目に触れることはない。御剣の由来とは――。
宮内庁によると、天皇から皇太子に御剣とされる刀が授けられたことが初めて文献で確認できるのは平安時代前期、敦仁(あつぎみ)親王(後の醍醐天皇)が皇太子となった893年のこと。父の宇多天皇が、関白だった藤原基経から献上されたものとされる。
皇室と姻戚関係にあった藤原氏が皇太子の地位を安定させるため、皇位の証しである三種の神器の一つ「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」に倣って作らせたとの説もあるが詳しいことは分かっていない。平安後期からは皇位継承予定者を確定させる立太子の儀式に合わせて授けることが定着したようだ。その後は所在不明にもなったが、その都度代わりの刀が作られたとされる。
上皇さまは1952年11月、陛下は91年2月、それぞれ立太子の礼に合わせて授けられた。普段は宮内庁が管理している。皇位の証しとされる三種の神器などと同様、皇室経済法で定める「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」と位置付けられ、相続税も贈与税もかからない。
秋篠宮さまは8日、授けられた御剣を伴って歴代の天皇などをまつる宮中三殿にご夫妻で参拝する。今後は陛下が毎年11月に国の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る宮中祭祀(さいし)「新嘗祭(にいなめさい)」で、秋篠宮さまが拝礼する際に側近がささげ持つ。
皇太子に伝わる刀としては、他に「行平御剣(ゆきひらぎょけん)」がある。後鳥羽上皇とゆかりがあった豊後国(現在の大分県)の刀匠が手がけたとされる。昨年9月に陛下の側近から秋篠宮さまに手渡される行事が行われ、翌月の「即位礼正殿(せいでん)の儀」の際に帯剣した。新嘗祭以外の宮中祭祀で使われる。【稲垣衆史】