韓国銀行の設立目的に「雇用安定」を追加すべきだという政界の主張が勢いづいているようだ。この数年間、「従来の設立目的である『物価安定・金融安定』と相いれない」と言っていた韓国銀行が、見解に変化を見せているためだ。李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁は先月の国政監査で、「法案が通過すれば目標設定に関する議論に参加し、中央銀行の変化について考える」と述べた。これを受けて、与党・共に民主党の金ギョン侠(キム・ギョンヒョプ)、朴洸オン(パク・グァンオン)議員に続き、野党・国民の力の柳性杰(リュ・ソンゴル)議員が韓国銀行法改正案を発議した。
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韓国銀行が変化を見せたのは、政策環境の変化をこれ以上見過ごすわけにはいかなくなったためだ。韓国銀行は物価を雇用や景気を代表する指標と見て、2%の物価上昇率を目標に金融政策を展開してきた。ところが、世界金融危機以降、低物価が続き、失業率と物価の力関係を説明する「フィリップス曲線」はもはや有効ではないという分析がたびたび取りざたされており、新型コロナウイルス感染症流行でなおのこと信頼性を失った。こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)が平均物価目標制(AIT)導入を示唆し、金融政策の重点を物価から雇用に移すことから手を打った。
韓国銀行が雇用安定を設立目的に追加しても、すぐに変化を期待するのは難しそうだ。基準金利の調整と市場安定化政策を主要政策手段として使う韓国銀行にとって、雇用安定のために使う手段はこれといってないためだ。銀行に対し限定的な監督権限を持ち、さまざまな非伝統的金融政策を取ることができるFRBとは事情が違う。「権限なしで義務だけ増やしている」という不満が韓国銀行内部から出ているのもこのためだ。