新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、厚生労働省の専門家組織は、感染者増が顕著な北海道について、「濃厚接触者対応も厳しい状況となってきている」と指摘した。
東京や大阪などでは感染経路不明者の割合が4~6割に達し、専門家組織のメンバーは「今の流行はクラスター(感染者集団)対策で制御できる状態ではない。感染自体が発生しないような強力な対策が必要」と訴える。
日本の感染拡大防止策は、各地の保健所が中心となって行うクラスター対策に軸足が置かれてきた。見つかった感染者の行動履歴を調べ、濃厚接触者らを追跡する「積極的疫学調査」は「日本モデル」とも呼ばれ、拡大防止に一定の効果を上げたとされる。
しかし、現在の「第3波」は、クラスターの多様化が大きな特徴だ。夏の第2波では夜の繁華街が大きな問題になったが、第3波のクラスター発生場所は医療機関や職場、外国人コミュニティーなど多岐にわたる。専門家組織はこれらに加え、感染者検知が困難な「見えないクラスター」が感染拡大の一因と指摘している。
保健所の体制逼迫(ひっぱく)の懸念が強まる中、厚労省はクラスター調査について、高齢者施設などを優先する方針を決めた。効率的な調査で、保健所の業務負担と共に重症者数を減らすのが狙いだ。
ただ、新規感染者数が連日2000人を超える状況では、クラスター対策は限界に近いとの声もある。専門家組織のメンバーは「クラスター対策は、感染が流行していない地域での散発例を抑え込む効果はある。しかし、感染経路不明例が半数にも達すれば、どう頑張っても流行を制御するのは難しい」と指摘。「国は、感染そのものが発生しないように対策を取るべきだ」と強調し、県境を越えた長距離移動を制限する必要性などを訴えている。