「バーニングサン」事態で有名になったソウル江南区(カンナムグ)ルメリディアンホテルの全景。 [ルメリディアンホテル ホームページ]
ソウル市内のホテルが不動産市場にあふれている。江南(カンナム)最初の一流ホテルの瑞草区(ソチョグ)シェラトンパレスホテルと、「バーニングサン」事態で有名になった江南区のルメリディアンホテル、そして60年の伝統を誇る中区(チュング)ダブルA(旧明洞アストリアホテル)が最近売却され、龍山区(ヨンサング)クラウンホテル、中区ティーマークホテル明洞など売却交渉を進行中のホテルは数えきれないほどだ。明洞地域のホテルの9割は売りに出されている。慶煕大ホテル経営学科のハン・ジンス教授は「明洞や忠武路(チュンムロ)などでホテルの支配人をしていた教え子が職場をやめたという話をよく聞く」と語った。業界では今年、ソウルのホテル全体のうち多ければ半分ほどが売却されると見込んでいる。
◆特別法でホテル急増後にコロナ直撃弾
このように過去にないほどホテルの売却が増えているのは、ホテルの建設を奨励する政府の特別法でホテルが急増した状況で新型コロナの直撃弾を受けたからだ。政府は中国人観光客が増えると予想して2012年に各種規制を緩和した「観光宿泊施設拡充のための特別法」を一時的(2016年まで)に施行した。容積率基準(ソウル基準一般住居地域150%、商業地域500%)、駐車空間確保基準(134平方メートル→300平方メートルあたり1台)なども緩和した。これを受け、ソウル市内のホテルは2012年の161カ所から19年には460カ所へと186%増加した。明洞で観光ホテルを運営するキムさん(56)は「昨年まではコロナがもうすぐ落ち着くという期待感から休業で人件費などを減らし、どうにか持ちこたえたが、もうあきらめるしかない状況」と話した。
◆開発地が少ないソウル…ホテルの敷地は貴重
売りに出されたソウルのホテルに注目しているのは不動産ディベロッパー、資産運用会社、投資銀行、建設会社、外国系投資会社などだ。不動産専門資産運用会社の中には30兆ウォン台の資金を運用する会社もある。ジェネラル・エクイティ・パートナーズのクォン・ジフン会長は「注目されているのは主にホテルの建物ではなく土地」とし「ソウル市内に新しく何かを建設できるる土地が不足している状況で、立地条件が良いホテルの敷地は魅力的になるしかない」と説明した。ホテルを取り壊してその場所に高級住居施設を建設するプロジェクトが最も多い。現代建設コンソーシアムが7000億ウォン(約650億円)で買収したルメリディアンホテル(敷地1万362平方メートル)はソウル蚕室(チャムシル)ロッテタワーシグニエルや清潭洞(チョンダムドン)ピエンポルスのような最高級住居用オフィステル(ビル)に変貌する見通しだ。シグニエルは専用面積244平方メートルのオフィステル1室が115億ウォンで取引されたりもした。不動産ディベロッパーのザ・ランドが3500億ウォンで買収したシェラトンパレス(9968平方メートル)もホテルを取り壊して高級住居団地に開発する計画だ。現代建設コンソーシアムが優先買収交渉者に決まったクラウンホテル(7011平方メートル)と東大門区(トンデムング)の慶南ホテル(3633平方メートル)も現代建設がオフィステルにする計画だ。
◆龍山ドラゴンシティホテルのうち500客室は共有住居地に
従来のホテルの施設を一部変更して共有住宅などにする動きも目立つ。共有住宅とはウィーワークのような共有オフィスの住居用バージョンで、建物1-2階にホテルラウンジ、フィットネスセンター、読書室などの便宜施設が入り、入居者が共有する新しい概念の住宅だ。アジア最大規模の龍山ドラゴンシティホテルは全体1700客室のうち500室を共有住居地に変更する計画だ。不動産コンサルティング会社(株)カインドのリュ・サンヨプ代表は「資産運用会社がホテルを買い取って共有住宅に変えて、共有住宅管理専門会社が共有住宅内の施設を運営するというのが新しいトレンド」と説明した。政府が昨年末に発表した不動産対策にもホテルを公共賃貸住宅にする計画が含まれている。
しかしこうした変化に障害がないわけではない。まず政府のホテル建設奨励特別法で容積率が緩和されたホテルを別の用途に変更する場合、従来の恩恵を維持すべきでないという指摘もある。最近ホテルを買収した事業者もまだ許認可手続きを踏めていない。また、都市にホテルは必要施設であるため、コロナ以降にまたホテル不足問題が浮上する可能性もある。