(CNN) 米カリフォルニア州でアジア系米国人の高齢者が一方的に襲撃される事件が相次いでいる。ベイエリアでは少なくとも3人が被害に遭い、新型コロナウイルスに関連したアジア系に対する偏見の高まりが懸念されている。
オークランドのチャイナタウンで8日に記者会見したアラメダ郡地区検察のナンシー・オマリー検事は、アジア系に対する犯罪に照準を絞った特別対策班の設置を発表した。中でも中国系米国人の居住者や労働者を狙った犯行の急増は容認できないと強調している。
同州北部やオークランドのチャイナタウンでは、アジア系の高齢者が相次いで被害に遭っていた。
サンフランシスコでは1月28日、朝のウォーキングに出かけたタイ出身の84歳の男性が、いきなり暴行されて死亡した。この事件では19歳の男が殺人などの容疑で逮捕された。
オークランドのチャイナタウンでは同月31日、男が3人に襲いかかって91歳の男性と60歳の男性、55歳の女性が負傷した。この事件で暴行の罪に問われた28歳の男は、ほかにも数人を襲撃したとして、2月1日に精神衛生上の理由で拘束されている。
この2つの事件の間に関連性はないと思われる。しかし中国の武漢で見つかった新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、反アジア感情の高まりは一層あらわになっている。トランプ前大統領は同ウイルスを繰り返し「チャイナ・ウイルス」と呼んでいた。
実際に、新型コロナに関連して人種差別や憎悪感情を経験したというアジア系米国人は相当数に上る。調査機関ピューが昨年6月に実施した調査では、新型コロナの流行が始まって以来、アジア系米国人のほぼ3分の1が、人種差別的な暴言や冗談を浴びせられたと答え、26%は暴行されるかもしれないとの不安を感じると回答した。
アジア系の高齢者を狙った一連の暴行は、ベイエリアで長年くすぶり続けていた問題を表面化させた。
活動家のアマンダ・グエンさんが共有したビデオでは複数の事案を取り上げ、アジア系に対する人種差別と位置付けている。ベイエリアで育った俳優ダニエル・ウーさんとダニエル・デイ・キムさんは、2万5000ドル(約260万円)の賞金をかけ、チャイナタウンの事件の容疑者逮捕につながる情報の提供を呼びかけた。
ジョー・バイデン大統領は就任後間もなく署名した覚書の中で、「扇動的な外国人嫌悪の発言が、アジア系米国人と太平洋諸島系(AAPI)の個人や家族、社会、ビジネスを危険にさらしてきた」と指摘。保健福祉省に対し、新型コロナウイルスに関してAAPI社会に関する文言の改善や配慮を盛り込んだ指針の発行を検討するよう指示していた。