中国によるウイグル族への残虐行為、バイデン氏は何をすべきか

By | February 26, 2021



バイデン氏(左)はウイグル族への残虐行為が問題視される中国とどう対峙するのか/Getty Images

バイデン氏(左)はウイグル族への残虐行為が問題視される中国とどう対峙するのか/Getty Images

(CNN) あまりにも長い間、世界は中国による大規模な強制収容と強制労働の報道を無視してきた。イスラム教徒のウイグル族や他の少数民族に対し、北西部の新彊地域でそうした政策がとられているとの報告に目をつむってきた。だがここへきて、CNNとBBCが深層に切り込んだレポートを公開。レイプや虐待、拷問に関するおぞましい証言が、中国の収容施設に実際に入ったウイグル女性の口から語られた。

アメド・カーン氏
アメド・カーン氏

これを受けて中国は、BBCワールドニュースの中国国内での放送を禁止。虐待の事実を否定し、CNNに対しては「いかなる形であれ、訓練生たちを侮辱、虐待することは固く禁じている」と反論した。しかし今回の女性たちの証言以外にも、これまで複数の関連報道がなされており、その中には中絶や不妊手術の強制、ハイテク機器を使用した監視活動、ウイグル族の子どもを両親から引き離すといった内容が含まれていた。

このジェノサイド(集団殺害)――それ以外の何物でもない――は、米国のバイデン新政権と国際社会に差し迫った試練を突きつける。両者がようやく、なまぬるい批判にとどまらない現実の行動によって対応するのか、あるいは様々な価値観や普遍的な権利、国際法が蔑ろ(ないがしろ)にされてしまうのか。

ジェノサイドという言葉は軽々に使用されるべきではないが、これをもって中国によるウイグル族への扱いを形容するのは正しい。国連のジェノサイド条約と米国の国内法が明確に定めているように、ジェノサイドとは必ずしも大量殺害に伴って集団が直ちに壊滅することを意味せず、むしろ集団全体もしくはその一部が、意図した結果として壊滅する状況を指す。法律の専門家や評論家の間での意見の相違は問題の焦点から目をそらさせ、単に中国がジェノサイド的行為を続けるのを許すことになる。

心強いことにバイデン氏とブリンケン国務長官は、すでにジェノサイドという言葉を使い、国際的な取り組みを主導して性別に根差す暴力に終止符を打つと約束した。ただ新政権のメッセージは複数の高官が言葉を濁したことで歯切れの悪いものにとどまっている。バイデン氏自身も、先週行われた一般市民との対話集会の後で批判を浴びた。中国によるジェノサイドを重要視せず、「異なる規範」の問題として扱ったとみられる一幕があったためだ。同氏の前向きな発言の数々も、これまでのところ具体的な政策によって裏付けられているとは言えない。そのよい例が、大統領就任後に初めて行った中国の習近平(シーチンピン)国家主席との電話会談だった。ここでバイデン氏はウイグル族への弾圧に対する懸念を表明。それ自体は望ましい一歩ではあるものの、やはり米国として統一された政策の裏付けがない状況では十分とは言えなかった。求められるのは、包括的な戦略によって中国にウイグル族への人権弾圧の責任を課し、何よりもまずその暴力行為を止めさせることだ。

その第一段階として、明確でまとまった米国としての政策をはっきり打ち出す必要がある。明確さの欠如は今に始まった話ではない。ポンペオ前国務長官はウイグル族に対する犯罪を的確にジェノサイドと宣言したが、トランプ政権による中国への働きかけや、より広範な意味での人権をめぐる取り組みはひいき目に見てもむらがあり、一貫性に乏しかった。

バイデン氏にはこうした状況を改善するチャンスがある。明確で一貫した米国の立ち位置を示せば、政府を挙げての対応が可能になり、ウイグル人権法並びに関税法第307条を確実かつ完全に執行できる。これらの法律は、ウイグル族などへの人権弾圧に関与した当事者に制裁を科したり、強制労働で生産された製品がどこで米国の供給網に流れてくるかを突き止めてその輸入を禁止したりする。

これは極めて重要な意味を持つ。なぜならニューラインズ・インスティテュート・フォー・ストラテジー・アンド・ポリシーによると、新彊地域で生産される綿は中国国内の85%、世界全体の20%をそれぞれ占めるからだ。米首都ワシントンに拠点を置き、以前はセンター・フォー・グローバル・ポリシーの名で知られた同シンクタンクは、昨年公表した報告書で「有力な証拠に基づき、大半の新彊綿の生産は強制的で国家が運営するプログラムと関係があることが分かった。このプログラムは少数民族を標的にしている」と指摘した。

中国はウイグル族の強制労働によってハイテク製品、衣料品、医療向けの個人用防護具(PPE)を製造していると非難されている。その多くが米国に輸出され、利益を生み出す。またウイグル族の強制労働を利用して製造したヘア製品を米国で販売しているとみる向きもある。現地の収容施設の元収容者は、CNNへの取材に答え、施設内にいる間無理やり髪の毛を切られたと明らかにした(中国は、作業に従事する人への虐待の疑惑を否定している)。

政府を挙げての対応が意味するように、これはただ国務省の外交官が人権問題に取り組む際に抱く懸念という話にとどまらない。ジェノサイドの阻止は、中国問題を扱うすべての政府機関の優先課題となるべきだ。この話題は貿易やテクノロジー、テロ、気候、そして世界の健康問題に関する話し合いの場でも取り上げる必要がある。中国政府は、これが簡単に払いのけられる問題ではないことを理解しなくてはならない。むしろ今後は、あらゆる意見交換の場での中心的なテーマになるだろう。

加えて、各政府機関の横断的な対応はとりわけ、新彊のウイグル族に対する性別に基づいた暴力に注力すべきだ。バイデン氏はすでにホワイトハウスでジェンダー政策のための諮問委員会を立ち上げ、国連の女性・平和・安全保障に関する行動計画(トランプ政権はこれを軽視していた)に関与していく方針を明確に打ち出した。ジェンダーの平等と、性別に基づく暴力からの自由を米国外交の中心に据えるのが狙いだ。就任から最初の1週間で、バイデン氏はメキシコシティー政策(通称グローバル・ギャグ・ルール。トランプ前大統領が再導入していた)を撤回した。同政策は、女性の性と生殖の健康に関する対外援助の規制を意図していた。ただ政府を挙げて女性の健康、権利、安全の保護と促進に注力するといっても、その範囲をウイグル族にまで広げないのであれば、取り組みが実を結ぶことはないだろう。BBCとCNNが女性たちの証言を報じた後ではなおさらである。

これらの証言により、バイデン氏は米国の五輪への関与も再考せざるを得なくなるはずだ。過去に何度も起きたように、五輪の開催を通じて独裁政権はプロパガンダを広め、権力に正統性を付与してきた。ナチス政権下で開催された1936年の大会に始まり、ソ連で行われた80年大会、中国共産党が主導した2008年大会、そしてプーチン大統領率いるロシアでの14年大会もそうだった。中国によるウイグル族への弾圧やその他の人権侵害への対抗措置として、現在180を超える人権団体と各国の国会議員らが、22年冬季五輪の開催地を北京から変更するか、大会そのものをボイコットするよう呼び掛けている。

ホワイトハウスは最近、この点に関して質問を受けたが、中国の人権侵害を非難する重要な機会をみすみす逃す結果に終わった。米国が先頭に立って問題に対処する姿勢も示せなかった。米国は多国間の取り組みを主導する役割を担うべきで、特にイスラム教国との連携は必須だ。沈黙を守ることは、イスラム協力機構によるあからさまな宥和(ゆうわ)政策ほどではないにせよ、恥ずべき態度だと言える。我々は総力を挙げてこれに取り組まなくてはならないし、国際社会は声をそろえて宣言するべきだ。五輪に参加するかどうかは、ウイグル問題の進展次第だと。

さらに言えばバイデン氏は、ウイグル族へのジェノサイドに対する圧力を緩めることで中国にまつわる別の優先課題の達成を図るべきではない。同氏の大統領選での公約は、世界最大の二酸化炭素排出国である中国に圧力をかけ、石炭輸出の助成を止めさせたり、自国の汚染を他国に請け負わせるのを阻むといったことだった。気候変動が人類の存在にかかわる優先課題であるのは明白だ。しかし政権で気候変動対策の大統領特使を務めるジョン・ケリー氏が最近発言したように、米国が中国と気候問題で進展を図るのと引き換えに他の国益を犠牲にするつもりはないという考えは正しい。我々はケリー氏をはじめとする高官らにこの約束を守らせる必要がある。ある目標を達成するために別の目標を犠牲にすることはできない。現状でこれほどまでに激しい苦痛を味わっている人々がかかわる話であればなおさらだ。

私はルワンダ、ボスニア、イラク、シリアの各国で、性暴力の被害者とともに仕事をしてきた。そこで世界が過去の恐怖から目を背ける様子や、加害者の責任追及について、たとえ果たせたとしてもあまりにも遅いといった状況を目の当たりにした。今回も同じことを繰り返すわけにはいかない。バイデン政権が米国外交に新たな指針を与え、確実に米国の価値観と合致させようとするなら、世界へのメッセージとして、中国によるウイグル族の扱いは断じて容認されないのだと伝える必要がある。

アメド・カーン氏は人権擁護活動、政治活動、慈善活動に携わり、米シンクタンクのクインシー・インスティテュート・フォー・リスポンシブル・ステートクラフトや国際難民支援プロジェクト(IRAP)の役員を務める。1992年と96年のビル・クリントン氏の大統領選で主導的な地位に就いたほか、国際シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」の国際諮問委員会のメンバーも務めた。記事の内容は同氏個人の見解です。



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