映画事業などを拡大しているソニーの『スパイダーマン』シリーズのワンシーン。
ソニーは日本の8大家電メーカーで唯一10%を超える営業利益率を維持している。音楽と映画などのコンテンツをサブスクリプション方式で配信する形態で事業モデルを拡張し21世紀型サービス企業に変身した結果だ。これに対しパナソニックの営業利益率は目標値である5%の半分水準である2%台にとどまる。ハードウェア中心の20世紀型製造企業にとどまった結果と分析される。
◇「スマイルカーブ」に変わったソニー
ウォークマンで1980~1990年代に世界を制覇した成功に酔いしれたソニーはインターネット時代に適時に対応できなかった代価を十分に払った。2003年4月に純利益が前年同期比40%急減した。その後主力である電子事業の不振が続き、2009年から2014年までの6年間に5回の赤字を出した。
生き残りに向けソニーが選択した道は電子事業の割合を低くする事業再編だった。価格変動の影響を大きく受ける製造業から脱却し、企業が価格主導権を握りやすいサービス業に変身するという試みだった。
ソニーが進めた事業再編の大きな方向はコングロマリット・ディスカウント解消とスマイルカーブに要約される。コングロマリット・ディスカウントとはグループ全体の価値が系列会社の合計に満たない現象だ。タコ足式経営の弊害と指摘される。ソニーはこれまでの名声も気にとめずグループ価値の合計にマイナスとなる事業を処分するという結論を下した。
2012年に化学事業を日本政策投資銀行に売却した。その後2014年7月にPC事業とテレビ事業を順に整理した。世界で初めて実用化に成功したリチウムイオンバッテリー事業も2017年に村田製作所に売却した。
これに対し株式の65%を持っていた金融系列会社であるソニーフィナンシャルホールディングスは100%子会社にした。フィンテックと組み合わせた金融をソニーグループの核心事業部のひとつにするための決定だった。
スマイルカーブは製品を生産する過程で、中間段階である製造工程よりも最初と最後の段階である研究開発、ブランドマーケティング、アフターサービスの付加価値が高いという経営理論だ。各工程の付加価値をグラフで描くと微笑みを浮かべるようにU字型になるということから「スマイル」という名前がついた。
ソニーは事業再編を通じて過去に主力事業だった製造業の割合を大幅に下げた。代わりにゲーム、音楽、映画、金融などサービス産業と、イメージセンサーなど部品産業の割合は大きく高めた。核心事業部の大部分がスマイルカーブの両終端に位置したのだ。
◇家電依存度さらに高まったパナソニック
2011~2012年に2年連続で8000億円近い赤字を出したパナソニックも事業再編を試みた。2012年6月に就任した津賀一宏社長は「古いパナソニックとの決別」を宣言し、企業・消費者間取引(B2C)に偏った事業構造を企業間取引(B2B)に変えることにした。2000年代以降に韓国企業と中国企業との競争で押された半導体、携帯電話、テレビ市場から撤退する代わりにヘルスケア企業に変身したフィリップスを参考にした。巨額の赤字を出したプラズマテレビ、医療機器事業から相次ぎ撤退した。
だが電気自動車用バッテリーなど自動車部品と、「空間ソリューション」と命名した住宅事業を新成長動力として採択したのが誤った判断だった。2015年に確保した戦略投資資金1兆円の大部分を自動車関連事業に投じたが2019年に当該部門だけで466億円の赤字を出した。テスラにバッテリーを供給する事業は昨年初めて黒字を出したがLGエネルギーソリューションと中国CATLに大きく遅れ収益性を持続しにくいと分析される。
空調と照明に集中した住宅事業で企業買収合併を通じて収益力を補完しようとした戦略も失敗した。その結果決別するとしていた家電への依存度がむしろさらに高まった。昨年4~9月の営業利益の半分以上が消費者家電から出た。
さらに深刻な問題としては製造業マインドを捨てられない企業文化が指摘される。パナソニックは1956年に中期経営計画を業界で最初に発表してから3年ごとに経営計画を立てている。中期経営計画で最も重視するのが売り上げだ。企業の競争力が収益性と資本効率で評価される時代になったのに高度成長時代に重要だった売り上げ目標にしがみついているという批判が続いた。それでもパナソニックは2014年の中期経営計画で再び「創業100周年である2018年までに売り上げ10兆円を達成する」という目標を掲げた。2016年に売り上げが7兆円台に落ちてからパナソニックは利益を重視する戦略を採択した。