蔚山科学技術院のパク・ジョンファ教授は26日、韓国人1万人のゲノム解読を完了したと明らかにした。[写真 UNIST]
「韓国人のゲノムマップさえ完成すれば、がんや難病もすべて治療できる時代を開くことができます」。
蔚山(ウルサン)科学技術院(UNIST)バイオメディカル工学科のパク・ジョンファ教授は26日、中央日報とのインタビューでこのように話した。パク教授が主導する「蔚山1万人ゲノムプロジェクト」は、この日韓国人1万人に対するゲノム(遺伝子)解読を完了したと宣言した。このプロジェクトは健康な4700人、疾患者5300人など1万44人の韓国人のゲノム情報を収集・解読する事業だ。ゲノムは遺伝子(gene)と染色体(chromosome)の合成語で、DNAで構成されたすべての遺伝情報を指す言葉だ。「生命の設計図」と呼ばれる。
2003年に英国を中心とした多国籍研究陣が世界で初めてヒトゲノムマップを作った。1人の遺伝子を精密に解読した地図だ。その後各国で自国民のゲノムマップを完成させるために努力している。ゲノムマップを通じて各種疾病の解決策を探すことができるためだ。
例えばだれかがんにかかったと仮定しよう。正常細胞と比較してがんを誘発した細胞のどのような塩基配列に突然変異が発生したのか確認できるなら、がんを診断したり治療できる。パク教授は「このために韓国人の標準ゲノムマップが必要だ」と説明した。
これまで1万人以上の自国民を対象にゲノムマップを完成した国は英国、米国、中国などにすぎない。ゲノム解読にはあまりにも多くの資金と人材が必要なためだ。実際にパク教授の研究チームが2015年にプロジェクトを始めてからこれまで1万44人のゲノム情報を収集・解読するのに180億ウォンが投入された。パク教授は「専門人材不足や研究資金支援などで残念な部分もあるが、自発的に参加した国民が多く思ったよりも早く1万人のゲノムマップを完成できた」と話した。
今回のプロジェクトは韓国人の標準遺伝子変異情報データベースを構築したという点で意味が格別だ。ゲノムだけでなく、転写体、核外遺伝子、健康診断情報、臨床情報、生活習慣情報などを確保した。こうして得た情報は次世代ゲノム事業「多重オーミクスビッグデータ」につながる。多重オーミクスビッグデータは人間の多様なデータを分析して特定疾病の原因と変化を明らかにする研究方式だ。
パク教授チームは今後、これまでに完成させた1万人のゲノムマップ分析に集中する計画だ。さらに韓国人10万人のゲノムマップ作成にも挑戦する計画だ。韓国人がよくかかる遺伝疾患を究明するためだ。
UNIST研究陣は昨年韓国人1000人を対象に進めた韓国人ゲノム分析結果を国際学術誌「サイエンス・アドバンシス」に発表した。研究陣は韓国人のゲノムマップが英国人、米国人を対象に完成したヒト標準ゲノムマップと違った塩基配列を4000万件ほど発見した。このうち34.5%が韓国人の塩基配列で1件しか見られない「シングルトン変異」だった。パク教授チームのチョン・ソンウォン研究員は「韓国人がよくかかる特異な遺伝疾患を究明するのにゲノムマップを活用できる。がんを分析する時に韓国人のゲノムマップを活用し、より正確にがんの原因と状態がわかる」と説明した。