韓国、最低賃金の急騰に不況まで…バイト雇用の社長が31年ぶり最少
ソウル江南(カンナム)で飲食店を経営するパクさん(41)は昨年、晩の時間のアルバイト学生を解雇し、忙しい時間には妻を呼んで店を維持してきた。新型コロナの影響で売り上げが減少した中、人件費の負担が増えたからだ。パクさんは「来年また最低賃金が大きく上がるが、それでも価格を上げれば客が急減する」とし「昼のアルバイト学生にもやめてもらって、キオスク(無人注文決済端末)を設置して費用を減らす考え」と話した。
統計庁が14日に発表した「6月の雇用動向」には、パクさんのように自営業者の困難がそのまま表れた。先月、職員やアルバイトを雇用する自営業者(雇用員がいる自営業者)数は128万人と、前年同月比で8万4000人減少した。これは6月基準で1990年(118万6000人)以来31年ぶりの最少水準となる。
雇用員がいる自営業者の減少傾向は長期化している。2018年12月から先月まで31カ月連続で前年同月比で減少したが、これは90年代の通貨危機、2000年代の金融危機を上回る歴代最長だ。
自営業者が職員を解雇し、創業者は最初から職員を雇用しない(雇用員がいない自営業者)ということだ。小商工人連合会が1026人を対象に実施した実態調査によると、37.4%が最低賃金に負担を感じて1人または家族経営で事業体を運営していることがわかった。
青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)は2018年の最低賃金の急激な引き上げにもかかわらず「雇用の質」が改善しているとし、雇用員がいる自営業者数の増加を根拠として提示したが、この根拠がむしろ悪化する正反対の現象が表れている。
中央大経済学科のイ・ジョンヒ教授は「新型コロナに加え、最低賃金引き上げによる人件費の負担までが重なったことで、店舗では自動注文システムを使用し、コストを削減しようと家族経営をする自営業者が増えたためと分析される」と述べた。
◆飲食店経営者「最低賃金がまた上がるとは…バイト解雇して無人注文機設置」
一方、雇用員がいない自営業者は先月430万人となり、前年同月比で11万3000人増えた。経営上の困難で職員やバイトを雇用できないケースや店舗を自ら運営する社長が増えたということだ。
イ・ジョンヒ教授は「固定支出を減らすためにこうした傾向は続くとみられ、結局、自営業者で生じる雇用は減っていくだろう」と予想した。実際、先月の就業者数を業種別にみると、自営業者の比率が高い卸小売・宿泊飲食業の就業者数は前年同月比で15万2000人減少した。
延世大経済学部の成太胤(ソン・テユン)教授は「最近は雇用が回復傾向だが、自営業の不振は相変わらずだ」とし「新型コロナ拡大以前から最低賃金引き上げと景気不振などで自営業者の心配が深まった状況で新型コロナという追加の衝撃があったため」と分析した。
新型コロナ第4波で首都圏に事実上「通行禁止」に近い社会的距離「第4段階」が適用され、7月の雇用統計では自営業者の困難がさらに明確に表れる見込みだ。さらに来年から適用される最低賃金引き上げ(今年比5.1%上昇の9160ウォン)も、当面の雇用負担として作用するという分析が出ている。韓国コンビニエンスストア経営者協議会は「賃金を上げようとしてもできない状況だが、こうした現実を無視した来年度の最低賃金引き上げ決定で『自発的不服従』に転換するしかない」と明らかにした。
統計庁のチョン・ドンミョン社会統計局長は「第4波の影響は7月の雇用動向から反映され、宿泊業や飲食店では雇用が減少するとみられる」とし「実際、最低賃金がまた引き上げられる2022年の前から心理的な効果で雇用に影響があり得るが、いつから影響を表れるかは予断するのが難しい」と説明した。
一方、6月の就業者数は計2763万7000人と、1年前に比べ58万2000人増えた。昨年6月に就業者が前年同月比で35万2000人減少したが、その影響が表れた数値だ。就業者数は3月に31万4000人増え、13カ月ぶりに増加に転じてから4カ月連続で増加している。
しかし細部指標では雇用の質の問題が表れた。先月増えた就業者の半分に近い47%(27万3000人)は単純労務従事者だ。職業別の増減率をみると、飲食品のデリバリーなど単純労務従事者が最も多く増えた。
求職断念者は58万3000人と、1年前に比べ4万6000人増加した。2014年に統計基準を変更した後、6月基準で過去最多だ。働く能力と意志があるが仕事がないため最近求職をやめた人がそれだけ多いということだ。求職断念者は昨年3月から今年6月まで15カ月連続で増加している。