
受験生ら3人が刃物で襲われた現場付近を調べる捜査員ら(15日午前10時8分、東京都文京区の東京大学で)=沼田光太郎撮影
全国で大学入学共通テストが始まった15日朝、試験会場の東京大学農学部正門(東京都文京区)付近で、受験生ら3人が次々と刃物で切りつけられた。殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのは名古屋市の高校生の少年(17)で、会場に向かう生徒らに動揺が広がった。
【写真】着火剤のようなものが投げ込まれた南北線東大前駅の改札付近
「大丈夫か――」。東大弥生キャンパスにある農学部正門前の酒店「高崎屋」の店主、渡辺泰男さん(82)は午前8時半過ぎ、大学関係者が必死に呼びかける声を聞いた。店先に出ると、周囲で激しいサイレンの音が鳴り、門の手前に男性が倒れていた。奥にも倒れている人の足が見えたという。
数人の警察官が若い男性を抱えるようにして交番に連れて行った。警察官は「どこから来た」と大きな声で呼びかけていたが、男性は無表情だった。渡辺さんは「おっかなくて近づけなかった」と話した。
この試験会場では2日間で、約3700人が受験を予定している。現場周辺は警察官や消防隊員が行き交い、訪れた高校生らは「何が起きたの?」「会場には入れるの?」と不安を口にしていた。

木片などが焼けるぼやがあった東大前駅の改札付近(15日午前10時43分、東京都文京区で)=三浦邦彦撮影
会場に歩いて向かっていた私立高3年の男子生徒(18)は「友人から『人が刺される事件が起きた』とLINEで教えてもらった。まさか受験当日、自分が受ける会場で起きるなんて……」と戸惑った様子。別の女子生徒(18)は「怖くてたまらないけど、進路を決めるため、試験を受けるしかない」と声を震わせた。
現場最寄りの東京メトロ南北線東大前駅の改札付近では、この日朝、着火剤をまいて火が付けられる事件が起き、警視庁が、少年との関連を調べている。
高3の受験生の長女を送りに来た、さいたま市の女性会社員(51)は「改札付近でピンク色の薬剤のようなものがまかれているのに気付いた。受験生たちの動揺が心配だが、何とか試験を乗り切ってほしい」と祈った。
大学入試センター(目黒区)では午前9時、広報担当者が口頭で「東大本郷試験場で受験者2人が背中を刺される事案が発生しました」と発表。報道陣から詳細を問われると、「本部で大学と連絡を取っている」「過去にこうした事件が起きたか調べているが、記憶にはない」などと答えた。