路面凍結が原因とみられるスリップ事故が宮城県内各地で計約80件起きた11~12日、仙台市若林区の市道では9件の事故が集中した。背景として、この市道が2年前に凍結防止剤を散布する対象道路から外れた事情が浮かび上がった。
東部復興道路(奥)沿いの側道には「凍結スリップ注意」の看板が置かれている(17日、仙台市若林区で)
(林航平)
(写真:読売新聞)
「凍結スリップ注意」。現場の市道脇4か所には、そう書かれた看板がある。今回相次いだ事故を受け、若林区道路維持課が14日に設置したものだ。
宮城県警若林署によると、事故9件は、通勤時間帯の12日午前7~8時、東部復興道路(かさ上げ道路)に並行する市道(側道)の約1キロ区間で発生した。うち1件は、物損事故による渋滞で後続車が追突したはずみで対向車にぶつかり、4人が顔などに軽傷を負った。
市道路保全課によると、市は路面凍結の危険予測に基づき、緊急輸送やバス路線に使われる主要道路や勾配が急な道路などに、凍結防止剤をまく。凍結防止剤は塩化カルシウムの水溶液で、水との反応熱で氷を解かしたり、凍結を防いだりする効果があり、「凍結対策として欠かせない」(同課の担当者)という。
この市道は、2019年11月、防潮堤の役割を担う東部復興道路が全線開通すると、散布対象の主要道路とみなされなくなった。ただ、信号があり交通量が多い東部復興道路は「交通の流れが悪い」(タクシー運転手の男性)といった声があり、市道を使って亘理町や名取市などから仙台市に車通勤する人は少なくないという。
若林署によると、雪の多かった昨シーズン(20年12月~21年3月)もこの市道ではスリップ事故が計11件起きており、同署の沖興一交通課長は「重大事故が起こる前に、行政と協力して安全な道路交通の確保に努めたい」としている。若林区は近く、凍結防止剤の散布などの対応を検討する。
一方、同署は「あくまで事故原因は前方不注意」とドライバーに注意を呼びかける。ぬれているだけのように見える凍結路面「ブラックアイスバーン」状態になることも多いといい、沖課長は「路面が凍結していると思って走ってほしい。冬道を走る運転手は、1割減速、2倍の車間距離、早めの出発を徹底してほしい」と話している。