タイヤ脱落なぜ「9割以上が左後輪」なのか…専門家が指摘する“日本の道路事情”とナットの締め方の変化


ダンプカーのタイヤ2本が外れ…人にぶつかれば「死に至る可能性」

タイヤ脱落なぜ「9割以上が左後輪」なのか…専門家が指摘する“日本の道路事情”とナットの締め方の変化

FNNプライムオンライン

【画像】冬に多い車輪脱落事故 左側通行、道路の形状が関係か

1月18日、岐阜県中津川市の中央自動車道・下り線で、走行中のダンプカーから左の後輪4本のうち2本が外れ、100メートルほど転がる事故が発生した。

タイヤ1本は下りの神坂パーキングエリアで乗用車に衝突し、乗っていた2人が首に軽いケガをした。もう1本は中央分離帯を越え、上りのパーキングエリアに駐車中のトラック2台にぶつかった。

これは、国土交通省がウェブで公開している実験映像。時速60kmで走るトラックからタイヤが外れ、その先のダミー人形にぶつかる想定では…。

乗用車の約6倍、90kgもある大型車のタイヤがぶつかった人形の体は、タイヤに沿うように折れ曲がり、頭もタイヤに打ちつけられた。

人形が受けた衝撃は、人間なら頭蓋骨やろっ骨などが折れ、死に至る可能性が高いという結果だった。

冬場に車輪脱落事故が多いのは「初期なじみ」が原因?

また、年単位では2011年から年々増加傾向に。

なぜ近年、そして冬に大型車のタイヤ脱落事故は増えるのか。100件以上の交通事故鑑定を行ってきたラプターの中島博史所長に話を伺った。

まず、冬場に多い原因として「初期なじみ」が考えられるとのこと。

ネジはナットと山と谷がぴったり合わさることで締まるが、サビや傷などによって表面にはわずかな凹凸が存在する。この凹凸が走行することで擦れて平らになり、わずかな隙間ができてネジが緩みやすくなる現象を「初期なじみ」という。

中島さんによると、冬を前にスタッドレスタイヤに交換し、その後しばらく走ると「初期なじみ」によってタイヤが脱落しやすくなるのではないかとのこと。

また、タイヤが脱落する場合は9割以上が左後輪で、これには「日本の道路事情」と「ナットの締め方の変化」が関係するのではないかと中島さんはみている。

日本は左側通行で、左折する時は小回りになって、左後輪のタイヤがねじれて負荷が増える。逆に右折する時は大回りでスピードが出るため、遠心力によって左後輪の負荷が増える。

道路は排水のために中央がやや高くなっていて、緩やかな左下がりの傾斜を走っている状態のため、左のタイヤへより負荷がかかる。こうしたダメージの蓄積で脱落の可能性が高まってしまうと考えられるという。

2010年にはトラックの輸出などのために、ナットが国際規格に変更された。

左タイヤは、以前は左回しで締めていたものを、右回しで締めるものに変更。これにより、以前は走行中はナットが締まる方向へ力がかかっていたが、変更後はナットが緩む方向へ力がかかり、脱落の可能性が高まると考えられるとのこと。

中島さんは「因果関係ははっきりしていないが、この10年ほどの事故増加の原因になっているように見える」と話している。



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