SMBC日興証券本社(4日)=大石健登撮影
SMBC日興証券(東京)の幹部らが特定銘柄の株価を不正に維持したとされる相場操縦事件で、金融商品取引法違反容疑で逮捕された幹部らが、買い注文を入れる手順や株価の目標値などの情報をメールや電話で共有しながら、対象銘柄の買い付けを行っていた疑いがあることが関係者の話でわかった。東京地検特捜部はメールや音声データを入手しており、不正取引が組織的に行われていたことを示す証拠とみている。
特捜部は4日夜、専務執行役員で、株の売買を取り扱う「エクイティ本部」の本部長ヒル・トレボー・アロン(51)、副本部長アバキャンツ・アレクサンドル(44)、同本部エクイティ部部長・山田誠(44)、同本部エクイティ・プロダクト・ソリューション部の部長だった岡崎真一郎(56)の4容疑者を逮捕した。
発表などによると、4人は2019年12月~20年11月に扱った「ブロックオファー取引」を巡り、特定の5銘柄について大量の買い注文を出し、不正に株価を維持した疑い。同本部のうち、エクイティ部は自社資金で株取引を行う部署、ソリューション部は株主に営業を行う部署という。
記者会見で謝罪するSMBC日興証券の近藤雄一郎社長(右)ら(5日)
関係者によると、岡崎容疑者と山田容疑者は株主が希望する価格や、市場が閉まる間際に買い注文を繰り返す手順などをメールや電話で共有。一部の銘柄については上司のヒル、アバキャンツ両容疑者にも伝達していたという。特捜部はメールや音声データなどから、複数の部署間で情報が共有された上で、株価が下落しないよう買い支えが行われていたとみている。
4人は特捜部の調べに対し、「違法な取引はしていない」などと容疑を否認しているという。
同社のブロックオファーを巡っては、4人の逮捕容疑となった5銘柄のほか、別の5銘柄でも同様の行為が行われ、同社は計10銘柄で計約11億円の利益を得ていたとみられるという。
同社の近藤雄一郎社長は5日、東京都内で記者会見し、「信頼を裏切り、深くおわびする」と謝罪するとともに、「取引の公正性に問題がないかどうかを管理する社内体制が十分でなかった」と述べた。同社は外部の弁護士らで作る調査委員会を設置した。
◆ブロックオファー取引=証券会社が取引所の立会時間外に株主から大量の株式を買い取り、投資家に売却する取引。証券会社は終値を基準に決めた買い取り価格と売却価格の差額を利益として得る。株主にとっては一度に大量の株式を売却でき、投資家は手数料を支払わずに取得できるメリットがある。