
新型コロナウイルス感染症患者を対象とした臨床研究に使われるプラズマ乳酸菌=キリンHD提供
長崎大とキリンホールディングス(HD)は、免疫効果を高める働きを持つ「プラズマ乳酸菌」を使い、新型コロナウイルス感染症患者の症状改善効果を調べる臨床研究を始めた。年末までに研究結果の解析を終えるよう目指す。
免疫には、生まれつき備わっており、どんな外敵も直ちに攻撃する「自然免疫」と、ワクチンや感染によって獲得し、特定の病原体を狙い撃ちする「獲得免疫」の2種類がある。中でも自然免疫の司令塔「プラズマサイトイド樹状細胞」(pDC)の働きを活発化させるプラズマ乳酸菌の働きが注目されていて、インフルエンザウイルスなどへの抵抗力を高め、発症防止に寄与することが国内外で報告されている。
今回の臨床研究は、宿泊療養施設で過ごす軽症の新型コロナ患者50人が対象。4000億個のプラズマ乳酸菌を含むカプセルを毎日服用し、2週間後に鼻咽頭(いんとう)内の新型コロナのウイルス量やpDCの活性状態の変化、症状の改善率などを調べ、偽薬を使った50人のそれと比較するという。
研究責任者の山本和子・長崎大講師(呼吸器内科)は「変異の激しい新型コロナウイルスでは感染者を完全に抑え込むことは難しく、医療逼迫(ひっぱく)を防ぐ上でも個人の症状の速やかな改善や重症化予防が求められる。プラズマ乳酸菌は安全性も確認されている。自然免疫はあらゆる種類のウイルスに対応するので、この研究は将来のパンデミック(世界的大流行)への備えの一つになる」と話す。【田中泰義】