「階段では手すりを持って」担当者が社員を監視、ある自動車メーカーが“過保護すぎる規則”を設けるワケ


製造現場が抱える葛藤とは

「階段では手すりを持って」担当者が社員を監視、ある自動車メーカーが“過保護すぎる規則”を設けるワケ

「階段では必ず手すりを」。ある自動車メーカーの“規則”、その理由とは(画像:写真AC)

【画像】“驚きのルール”の理由とは?(8枚)

「階段では、必ず手すりを持ってください」

 驚く私に、担当者は困ったような笑みを浮かべた。

「安全のため、規則で決まっていますので」

 階段昇降の際の転倒、および転落を防ぐため、階段では手すりを持って昇り降りするのが規則なのだという。

 確かに階段という場所は日常の中でも意外な危険がひそむ場所だ。私自身、子どもの頃に階段から落ちて痛い思いをした経験もある。階段では安全に気を付けるべきなのは、間違いない。

 だがしかし、ここは企業のオフィスである。出入りするのは大人だけだ。

 それなのに「階段では手すりを持つ」という規則が課され、さらに昼休みなど人の行き来の増える時間には、安全担当者が、皆が手すりを持っているか監視に立つのだという。

 自動車メーカーという、いわば日本の中でも優秀な人材が集まる場所で、これほど“過保護”な光景が繰り広げられているとは、実に驚きである。

過保護な細やかさは公正さの証

 ある自動車関係エンジニアは言う。

「カッターの使用が禁止されているため、取引先から受け取った荷物を開けるのが大変だ」

 また他の重工関係技術者もこう話す。

「社内にある池への立ち入りが禁止された」

 日本の技術を引っ張る大企業が、まるで子供を相手にしているかのような規則を次々と社員に課しているのである。

 なぜこのようなことが起こるかというと、実はすべて労働災害防止のために行われているのだ。

 労働災害(労災)とは仕事に関連した作業が原因で発生したケガや病気、死亡などを意味する。

 労災は全て、労働監督基準署に必ず報告されなければいけない。そして会社は、必要な治療費などを保障しなければいけない。

 つまり、会議室を移動するために歩いていた階段で転んで足首をねんざしたのも、事務所でダンボールを開けるために使ったカッターで手を切ったのも、さらには休憩中に散歩がてら社内の池の飛び石を渡っていたら転んで頭を打ったのも、全て労働災害となり、報告の義務が発生するのだ。



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