岸田政権は長期政権になる? 識者に聞く「明らかに一線を画してる」


【東京ウオッチ】記者の取材メモから

岸田政権は長期政権になる? 識者に聞く「明らかに一線を画してる」

東京大大学院の内山融教授(本人提供)

「つまらないプリンス」が会見で見せた「らしくない」顔

「包摂の政治」へ

 「(高支持率の維持は)ある種の安定感、バランス感が理由だろうと考えています。安倍晋三政権、菅義偉政権の官邸主導型、トップダウン型とは異なり、岸田政権は各方面の意見を聞き、バランスを取っている印象です。そこが『安定』という評価につながっている気がします」

 「自民党政治を振り返ると、小泉純一郎政権(2001~06年)以降から『政高党低』の官邸主導型が定着していましたが、岸田政権は明らかに一線を画しています。異論がある人を認めない『排除の政治』から、党の意見も霞が関の意見もちゃんと聞く『包摂の政治』に向かっています。小泉政権以前の、旧来型の自民党のやり方に近いと言えるでしょう」

 -岸田政権が長期政権になる可能性はありますか。

 「00年以降の内閣を見ると、小泉政権、第2次安倍政権(12~20年)が最初の2~3カ月間に高支持率をキープし、長期政権に成長していきました。他の政権は、旧民主党政権を含め高い支持率で幕を切ったものの、2~3カ月間で急落して再浮上することなく短命に終わるパターンになっています。この傾向を基に岸田政権を見ると、発足から半年が経過した今も支持率を保っており、(6月22日公示-7月10日投開票が想定される)夏の参院選を乗り切れば長期政権になる可能性が高くなると思います」

見えぬ「新しい資本主義」

 「官邸主導型政治は、ややもすれば独善、独断に陥って間違いを犯しやすい短所がありました。ですから、私はそれとは距離を取った岸田首相の言う『聞く力』、熟議を大切にする政治姿勢を評価しています」

 「ただ、聞く力にも表と裏があります。裏側というのは、周りの意見に流されたり、振り回されたりして政策判断に混乱を来さないかとの懸念です。どこまで話を聞くのか。また、話を聞いた上で決断したら果断に実行に移せるのか。熟議だけでなく、実行するリーダーシップを発揮できるかどうかが最大の課題でしょう」

 「また、岸田首相は『新しい資本主義』も掲げていますが、これはいまだに具体像が見えません。近年の経済政策の潮流は市場競争を重んじる新自由主義を基軸とし、足らざるところや格差といった副作用を、公共事業、給付金などの分配を組み合わせて補ってきました。今、必要なのはこの思考パターンから転換、脱皮した新しい成長戦略なのです」

 「北欧諸国は社会保障を充実させることで国民の安心感を高め、消費を増やし、成長の糧としています。日本も、国民生活の安定に重点をシフトした成長戦略を示すことが大切な課題と言えます」



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