資料を手に記者会見する観光船運航会社の桂田精一社長(27日午後4時56分、斜里町で)=佐々木紀明撮影
記者会見を終え、土下座して謝罪する運航会社の桂田精一社長(27日午後7時15分、北海道斜里町で)=佐々木紀明撮影
北海道・知床半島の沖合で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が消息を絶った事故で、運航会社「知床遊覧船」(北海道斜里町)の桂田精一社長(58)は27日、事故後、初めての記者会見を斜里町で開き、「お騒がせして大変申し訳ございません」と謝罪した。事故当日(23日)の出航の判断について、桂田社長は、強風、波浪注意報が出ていたことを認識したうえで、「船長から出航可能と報告があり、大丈夫と判断した」とし、「結果的に間違っていた」と自身の責任を認めた。
【写真】会見で土下座する「知床遊覧船」の桂田社長
桂田社長は、会見中に何度も土下座し、陳謝。事故の経緯を説明した。
桂田社長によると、同社は運航の目安として「波の高さ1メートル以上、風速8メートル以上の場合は出航を取りやめる」としていた。当日は注意報が出ていたが、午前8時時点で、豊田徳幸船長(54)から「出航は可能」と報告があったとし、「その時は風と波が強くなかったので、海が荒れるようであれば引き返す条件付きの運航とすることを船長と打ち合わせ、決定した」と述べた。豊田船長は事故で行方不明となっている。
カズワンは午前10時に出港。午後1時13分、同業他社に「カシュニの滝だが戻るのが遅れる」と無線連絡し、5分後に「船首が浸水している」と救助を求めた。この頃の現場付近の波高は2メートルを超えていた。
当日は、カズワンと会社が交信する無線が壊れていたことも分かっており、桂田社長は「携帯電話や他の運航会社の無線でやり取りも可能なので出航を中止する判断はしなかった」と釈明した。
桂田社長によると、知床遊覧船の安全統括管理者は桂田社長で、運航管理者は豊田船長だった。報道陣から、安全管理体制について問われると、「結果として、会社の安全管理が行き届いていなかった」と述べ、事故原因については「分からない。すべて私の至らなさ」と頭を下げた。
海上保安庁の小型船から海に入り捜索をするダイバーら(27日午前10時10分、北海道斜里町沖で、読売ヘリから)=川口正峰撮影
国土交通省の担当者は27日夜、桂田社長の会見を受け、「(条件付きの運航という)考え方は基本的にはない」と述べ、安全管理規程で運航の中止基準とした荒天が予想される場合、出航は出来ないとした。