4630万円誤送金の流れ
山口県阿武町(あぶちょう)が、新型コロナ対策の臨時給付金4630万円を、誤って24歳の男性に振り込んだ問題で、町は男性を相手取り、金の返還と弁護士費用など合わせて約5100万円の支払いを求める民事訴訟を起こしました。今後の事件の流れなどを、三井住友銀行の元支店長でお金の専門家・菅井敏之さんと、大阪地検の元検事・亀井正貴弁護士の2人が解説します。
誤送金発覚後の町の動きに問題は?
誤送金が発覚した4月8日の経緯
阿武町の説明によると、4月8日の午前9時50分、銀行から阿武町に“誤送金”の連絡があったため、町は24歳の男性に電話しました。しかし繋がらなかったため、午前11時ごろ男性の自宅を訪問しました。男性に“誤送金”を説明すると、当初は驚いていたということです。「組み戻し」(返金)の手続きのため、銀行へ同行をお願いしたところ、「風呂に入るから1時間ほしい」と言われ、午後0時半ごろに出発しました。阿武町から宇部市にある銀行に2時間ほどかけて到着した段階で、「きょうは手続きをしない。後日、公文書を郵送してほしい」と言われ、銀行窓口も閉まってしまったこともあり帰宅してしまいました。
三井住友銀行元支店長 菅井敏之さん
Q.「組み戻し」の手続きは、わざわざ遠い支店に行かなくても、男性の自宅で書類に判を押すなどしてできないのでしょうか?
(三井住友銀行元支店長 菅井敏之さん)
「間違って振り込まれた人が『組み戻しに応じます』と言った段階で、振り込んだ銀行と受け取った銀行が打ち合わせして『組み戻し』をするのは可能だと思います。ただ一般的には、振り込んだ銀行が受け取った銀行に『組み戻し依頼書』を渡して、振り込まれた人に確認を取るというやり方になります」
大阪地検元検事 亀井正貴弁護士
Q.阿武町は誤送金が発覚した段階で、関係銀行に誤送金が発生しことと、本人に払い戻しを行わないように依頼する“公文書”を速達で送っていますが、効力はなかったんですか?
(大阪地検元検事 亀井正貴弁護士)
「公文書は、単純に告知するだけのものです。4月8日に物別れになった時点で“金融機関への仮差押え”などが必要だったと思います。この場合弁護士としては、翌日か翌々日には、仮差押えなど“お金の流出を防ぐ”対応をするべきだと思います」