12~14日の安倍晋三首相のイラン訪問は、訪問中にホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃される事態に遭遇するなど、中東外交の難しさを浮き彫りにした。一方で、現職首相として約41年ぶりにイランを訪れ、先進7カ国(G7)の首脳として2016年4月のイタリアのレンツィ首相(当時)以来、最高指導者ハメネイ師と会談したことは首相の存在感を押し上げた。軍事力を持たない日本が、民族と歴史が複雑に絡み合う中東外交で成果を示せる日は来るのだろうか。
「(米国とイランの)互いの複雑な国民感情など、緊張緩和に向けた道のりは大変な困難が伴う」
首相はイランから帰国した直後の14日夜、トランプ米大統領と電話会談後に記者団にこう述べ、米イラン対立の根深さをにじませた。タンカー襲撃に関しては「船舶を危険にさらす行動に対し、日本政府として断固非難する」と明言したものの、襲撃犯の“正体”は「いかなる者が攻撃したにせよ」と述べるにとどめ、イランの犯行と断定する米政府と一線を画した。
米国とイラン、それぞれと友好関係を保つ日本政府ならではの配慮だった。