ウクライナ南部ミコライウ州で、ロシア軍との前線付近から榴弾(りゅうだん)砲を発射するウクライナ兵士(13日)=ロイター
(写真:読売新聞)
【リビウ(ウクライナ西部)=笹子美奈子】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、「南部で露軍の戦力が破壊されている。良いニュースだ」とビデオで演説し、ウクライナ軍の反撃が成果を上げているとの認識を示した。南部では露軍も部隊の強化を図っており、攻防が激しくなるとみられる。
ウクライナ軍は13日、南部ヘルソン州内を流れるドニプロ川沿いにあるカホフカ水力発電所の橋を再び攻撃したと発表し、露軍が補給のために橋を使用することは「もう不可能だ」と主張した。
ウクライナ軍は、露軍の補給路となっている川にかかる車両用と鉄道用の橋計3本を攻撃し、川の西側に駐留する露軍部隊の孤立化を狙っている。英国防省は13日、3本の橋が「軍事的な補給目的では使用されていない」とSNS上で分析した。露軍が橋を修復しても補給は制限されており、「持久力」に影響が出る可能性も指摘した。
関連は定かではないが、ヘルソン州の西側に隣接するミコライウ州の知事は13日、西岸の露軍について「指令部隊が川の東側に向けて移動している」とSNSに投稿した。
一方、露軍が占領する南部ザポリージャ原子力発電所を巡っては、混乱が深まっている。再び砲撃が起きた13日には、原発を抱えるエネルホダルで住民らが避難しようと数百台の車が渋滞の列を作ったという。
相次ぐ砲撃について、ロシアとウクライナの双方は、相手側の攻撃と非難を続けている。英BBCは13日、同原発の技術者の話として、「露軍が、ウクライナ軍の攻撃と主張し原発からの送電網を破壊している」との見方を伝えた。
ザポリージャ原発を抱えるエネルホダル市の市長は14日、市内で砲撃があり、民間人に負傷者が出ているとSNSで明らかにした。
ロシアの在ウィーン国際機関代表部常駐代表は、14日に配信されたタス通信とのインタビューで、国際原子力機関(IAEA)が求める現地調査団の派遣について「8月下旬から9月上旬に実施されればよい」との立場を示した。ただ、「我々だけに依拠する問題ではない」とも指摘しており、早期実現は依然として不透明だ。