ウクライナ南部クリミアで、変電所火災で上がる黒煙(16日に取得した映像から、ロイター)
【キーウ=笹子美奈子】ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミアの北部にある弾薬保管場で16日早朝、爆発が起きた。タス通信によると、露国防省は「破壊工作」によるものだと指摘した。クリミアでは9日にもサキ軍用飛行場で大規模爆発が起きたばかりで、緊張が高まっている。
(写真:読売新聞)
露国防省によると、保管場でまず火災が発生し、その後、爆発が起きた。民間人2人が負傷し、約3000人が避難したほか、変電所で火災が発生し、鉄路の損傷で列車が遅延した。
米紙ニューヨーク・タイムズは16日、ウクライナ高官の証言として、自軍の精鋭部隊が関与し、「火球を打ち上げ、爆発につながった」と伝えた。
露有力紙コメルサントは16日、地元住民の話として、クリミア中部の軍用飛行場近くでも複数回、爆発音が響き、黒煙が上がったと伝えた。軍や治安機関は、小型ドローン(無人機)による攻撃の可能性もあるとみて調べているという。
露軍の拠点への攻撃は東部でも激化している。東部ルハンスク州の知事は15日、ドネツク州との州境近くにある露民間軍事会社「ワグネル」の基地をウクライナ軍が14日に攻撃し、雇い兵約100人を殺害したと地元テレビに明かした。ワグネルは現在、露軍のドネツク州制圧作戦で戦闘の主力を担っているとされる。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日夜のビデオ演説で、「東部で続ける抵抗は、南部の敵への圧力となっている」と強調した。ウクライナの最高会議(国会)は15日、戒厳令と総動員令を11月21日まで3か月延長するゼレンスキー氏の提案を承認した。
ロシアのプーチン大統領は16日、モスクワで開幕した国際安全保障会議でビデオ演説し、ウクライナ侵略は「覇権維持のために対立を必要とする米欧」に対抗するのが目的だったと主張した。また、「米国とその従属国は、主権国家の内政に無礼に干渉し、従わせようとする」と批判した。