(写真:読売新聞)
【キーウ=笹子美奈子】ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミアで、ウクライナ側が連日、露軍の拠点などに攻撃や工作を仕掛けている。20日に露黒海艦隊の司令部に無人機(ドローン)を飛ばしたのも、ウクライナ軍の作戦とみられる。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、クリミアを奪還する意思を改めて強調した。
【動画】ウクライナ軍、ドローン使いロシア艦艇を破壊
クリミア半島西部セバストポリの露軍黒海艦隊司令部付近で起きた爆発の様子(「クリミア先住民族組織」議長のフェイスブックから)
司令部があるセバストポリの当局者は20日朝、SNSで「入り江に砲撃兵器があるが、無人機は撃墜されずに低空飛行し、屋上まで到達した」と説明した。その後、「確認情報」として、「無人機を司令部上空で撃墜し、屋上に墜落した」と投稿した。
米政策研究機関「戦争研究所」は、司令部まで飛行したのは市販の大型ドローンで、「撃墜されたのではなく、爆発した可能性がある」との見方を示した。
司令部には7月31日にも無人機が飛来しており、ウクライナ軍は「敵の防空が無力だ」と主張した。露側が今回、無人機を撃墜したと強調したのは、司令部の中枢に再び無人機の侵入を許したことに強い危機感を抱いた表れとみられる。
黒海艦隊は今年4月に旗艦「モスクワ」が沈没し、今月9日のサキ軍用飛行場の大規模爆発でも多くの戦闘機を失っている。タス通信によると、艦隊トップは19日、年内に艦艇12隻などを追加配備すると表明した。
ウクライナの大統領府顧問は20日、SNSで、司令部から立つ煙だとする写真と共に「待っていた」とコメントし、ウクライナ側の攻撃を示唆した。ウクライナ軍の広報機関は20日、クリミアのハッカーによる攻撃により、現地の露国営テレビのチャンネルで「クリミアはウクライナだ」と宣伝する映像が流れたと主張した。
ゼレンスキー氏は20日夜のビデオ演説で、侵略開始から半年にあたる8月24日が、ソ連からの独立記念日でもあることに触れ、「クリミアの占領は一時的なものだ」と強調した。
ウクライナ本土では、独立記念日にあわせ、露軍が大規模攻撃を仕掛けてくるのではないかとの警戒も強まっている。キーウでは地下鉄の運行が制限された。砲撃が続く東部ハルキウ州は、23日夜から25日朝まで外出禁止令を強化すると発表した。