政府が経済財政運営の指針「骨太方針」と新たな成長戦略などを閣議決定した。30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代に対する3年間の集中支援など、雇用や所得に関する施策を手厚くしたのが今年の特徴である。
だが総じていえば、負担増などの痛みを伴う改革について具体的な言及はほとんどない。むしろ、世論受けしそうな政策ばかりを並べた印象である。これでは「骨太」というより「骨細」ではないか。
折しも、老後に2千万円の蓄えが必要とした報告書が論議を呼んでいる。給付と負担の在り方を含めた社会保障の総合的かつ重点的な政策は来年の骨太で行うなどとしている。参院選前だから踏み込まないのであれば問題だ。
必要な改革を断行するのが本来の骨太方針のはずだ。原点に立ち返り、年金や介護などの改革に正面から取り組んでほしい。
今年の骨太は、潜在成長率の引き上げや、成長と分配の好循環などを基本に据え、デジタル技術を最大限に活用した経済社会の構築を加速するとした。かねて政府が重視してきた課題であり、そこに新味があるわけではない。
ただ、人工知能(AI)やビッグデータなどの技術革新がもたらす環境変化に対応し、持続的な成長を実現するには息の長い取り組みが必要だ。そのために足らざる政策があれば適切に対応する。その積み重ねが肝要である。
就職氷河期世代の支援もそうだろう。人手不足とはいえ、この世代には正規雇用を希望しながら非正規の人が少なくない。
安定的な就労が促されれば消費を上向かせ、経済活力が高まる。高齢社会の支え手を増やすためにも政策の力点を置くのは妥当だ。引きこもりなどの長期無業者を支えるためにも、希望に応じて活躍できる環境を整えたい。最低賃金の引き上げなどと併せて成長を実感できる社会を目指すべきだ。
骨太は10月の消費税増税を明記し、米中摩擦などで海外経済が悪化すれば「機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行する」と盛り込んだ。必要性や緊急性をきめ細かく吟味しなければならない。
第2次安倍政権発足後、7度目の骨太と成長戦略である。過去の成長戦略152項目のうち約4割は進捗(しんちょく)が遅れている。これらの妥当性を含めて、不断の検証が必要である。