世帯年収500万円で「ゆとり」は現実か?統計データと生活実感から見る日本の家計

「家計にゆとりがある」と感じる世帯年収は、一体どれくらいなのでしょうか?一般的には「世帯年収500万円以上」がその目安の一つとして挙げられます。しかし、近年の物価高騰や教育費負担の増加を背景に、本当にこの水準で「ゆとり」を実感できるのか、多くの家庭が疑問を抱いています。本記事では、各種統計データやアンケート調査を基に、世帯年収500万円の「リアルな生活レベル」と「ゆとり」の実態を深く掘り下げていきます。

「家計にゆとりがある」と感じる年収の目安:調査結果を検証

家族構成やライフスタイルによって「ゆとり」の定義は異なりますが、株式会社ビースタイル ホールディングスが運営する「しゅふJOB総研」が2024年に行った「世帯年収とゆとり」に関するアンケート調査は興味深い結果を示しています。この調査で「家計にゆとりを感じるか」という質問に対し、世帯年収500万円以上の回答者の35.3%が「ゆとりがある」と回答しました。これは、世帯年収500万円未満で「ゆとりがある」と回答した11.5%と比較して約3倍もの開きがあります。

「ゆとり」の具体的な感覚としては、「急な出費にも対応できる」「趣味や外食にもある程度お金を使える」「教育費や老後資金を無理なく貯められる」といった要素が共通認識として存在すると考えられます。

日本円の硬貨と紙幣、電卓が置かれた机。家計管理や資産運用を考えるイメージ。日本円の硬貨と紙幣、電卓が置かれた机。家計管理や資産運用を考えるイメージ。

実際、年収500万円以上の世帯はどれくらい存在するのか

上記の調査で示された「ゆとりの基準」とされる世帯年収500万円以上の家庭は、日本全体でどれくらいの割合を占めるのでしょうか。厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、日本の全世帯における平均所得金額は536万円でした。

この調査によれば、世帯年収500万円以上の世帯は全体の41.5%に留まります。一方で、平均所得金額を下回る世帯の割合は61.9%であり、これは日本の全世帯の約6割が平均所得以下、または500万円未満の年収で生活しているという現状を示しています。

世帯年収500万円の生活レベル:具体的な家計シミュレーション

では、仮に世帯年収500万円の2人以上世帯で生活すると、どの程度の「ゆとり」が生まれるのでしょうか。年間の手取り収入を所得税、住民税、社会保険料などを考慮して約400万円と仮定すると、月額の手取りは約33万円となります。

総務省統計局が発表した「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、2人以上世帯における1ヶ月あたりの平均消費支出は30万243円です。この平均支出と比較すると、月額手取り33万円から平均消費支出を差し引くと、わずかな余剰がある計算になります。しかし、この支出には住居費や光熱費、食費、交通費、教養娯楽費などが含まれており、個々の家庭の状況や居住地域によっては、必ずしも十分なゆとりが確保できるとは限りません。

まとめ

世帯年収500万円は、一部のアンケート調査で「家計にゆとりを感じる」一つの目安とされています。しかし、厚生労働省の統計が示すように、実際の日本では多くの世帯がこの水準以下の収入で生活しており、また500万円の手取り額でも、物価高や予測不能な出費を考慮すると、必ずしもすべての家庭が「十分なゆとり」を実感できるわけではないのが現実です。各家庭の生活状況や優先順位に応じて、賢明な家計管理が求められる時代と言えるでしょう。

参考資料

  • 株式会社ビースタイル ホールディングス「しゅふJOB総研」アンケート調査(2024年)
  • 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
  • 総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」