崩壊すれば数メートルの海面上昇を引き起こすとされるスウェイツ氷河
(CNN) 南極大陸の氷河の一つについて、今後数年間で急速に崩壊する可能性があると研究者らが警鐘を鳴らしている。実現すれば急激な海面上昇を引き起こし、氷河自体消滅する恐れがあるともしている。
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当該のスウェイツ氷河は、崩壊の危険が高いことや世界的な海面上昇を引き起こす脅威などから「ドゥームズデー(最後の審判の日、この世の終わりの日)氷河」の異名をとる。5日刊行の学術誌、ネイチャー・ジオサイエンスに掲載された論文によると、地球温暖化に伴い、同氷河は海面下の基部が減退しつつある。このまま融解すれば、数メートルの海面上昇を引き起こす可能性がある。
研究者らはスウェイツ氷河のこれまでの崩壊過程を地図で示した。過去の状態を把握することで、今後の変化についての予測を立てるためだ。
その結果、過去200年のある時点で、氷河の基部が海底から分かれ、年2.1キロのペースで崩壊していたことが判明した。これはこの10年余りの間に観測したペースの倍に相当する。
この急速な崩壊は恐らく「ごく最近の20世紀半ば」に起きた可能性があると、論文の筆頭著者で米サウスフロリダ大学の海洋地球物理学者、アラステア・グレアム氏は報道向けの発表で述べた。
これはスウェイツ氷河が近い将来急速に崩壊しかねない状況にあることを示唆する。ひとたび氷河が海底の尾根を越えてせり出せば、それは現実のものになるとみられる。
論文の共著者を務めた英国南極観測局所属のロバート・ラーター氏によれば、現在のスウェイツ氷河は「まさに指の爪の先だけで持ちこたえている」状態であり、今後の短い時間尺度の中で大きな変化が起きると予想される。氷河の崩壊を食い止めている尾根はそれほど高くはなく、そうした変化は今後1~2年後にも生じる可能性があるという。
スウェイツ氷河は南極西部に位置する地球上でも最大規模の氷河で、その大きさはフロリダ州を上回る。ただ南極西部の氷床はさらに広大で、米航空宇宙局(NASA)によると、そこに閉じ込められている氷は地球の海面を最大4.8メートル上昇させる水準だという。