【ロンドン=池田慶太】19日に予定されるエリザベス英女王の国葬には、世界から500人近い国家元首級や王族らの参列が見込まれる。英国が威信をかけて準備を進める歴史的行事は、ウクライナ侵略など国際情勢の影響を受けているほか、要人の受け入れ態勢にも課題を抱えている。
警備・移動 受け入れ態勢 不安も
(写真:読売新聞)
英国での国葬は1965年のウィンストン・チャーチル元首相以来。会場となるロンドン中心部のウェストミンスター寺院は約2000人を収容できる。英メディアによると、女王の親族や王族、閣僚、ゆかりの知人らが約1500人参列するため、外国弔問客の「枠」は500人程度。英政府はこの枠内で世界各国に招待状を送付した。
70年にわたり在位した女王は100か国以上を訪問しており、世界の要人と親交があった。
米国からはバイデン大統領がジル夫人とともに参列する。女王が国家元首を務めた国や、女王がトップだった英連邦のメンバー国、仏独などの元首級らが参列を表明した。日本の天皇、皇后両陛下も即位後初の外国訪問として参列される。
例外がロシアとベラルーシだ。ロシアはウクライナに侵略し、ベラルーシはロシアを側面支援している。英紙インデペンデントなどによると、英国の制裁対象になっている2国には招待状が送られなかった。国軍がクーデターで政権を握ったミャンマーも、旧英植民地という接点がありながら招待が見送られた。
中国外務省の毛寧(マオニン)副報道局長は14日の定例記者会見で、国葬について「ハイレベル代表団の出席を前向きに検討している」と述べるにとどめた。女王は2015年に訪英した習近平(シージンピン)国家主席を手厚くもてなした一方、英政府は香港問題などを厳しく批判している。中国政府は人選にあたり、政治的影響をギリギリまで見極めるとみられる。
外国トップが集う国葬は、英国にとって「国賓訪問の受け入れ数百回分」(英政府関係者)に相当するため、要人の警備やスムーズな移動が不安視されている。
政治専門紙ポリティコによると、英政府は参列予定の国家元首らに対し、自国の専用車の使用を認めず、英側が用意した護衛付きのバスで一斉に移動するよう求めた。一方、英紙ザ・タイムズによると、先進7か国(G7)首脳のバス移動は「不適切」との声が英政府内にあり、日米を含む一部の国は例外的に専用車が認められる見通しだ。