ウクライナを巡る米ロ首脳会談が合意なく終了したことを受け、欧州の主要国首脳らは16日、今後の対応を協議した。会談結果に対する安堵と警戒が入り混じる中、共同声明ではウクライナの主権と領土の一体性を守る重要性が改めて強調された。これは、長期化するロシアによる侵略戦争の終結と、公正かつ持続的な平和の実現に向けた国際社会の複雑な思惑を浮き彫りにしている。
欧州首脳の共同声明とウクライナへの揺るぎない支持
協議の結果、欧州首脳らは共同声明を発表し、ウクライナでの殺戮を止め、ロシアの侵略戦争を終わらせるためのトランプ米大統領の努力を歓迎すると表明した。しかし、同時に「領土に関する決定はウクライナに委ねられている。国境を武力で変えてはならない」と強く釘を刺し、ウクライナの意向を無視した安易な領土割譲などの譲歩を明確に否定した。
声明はさらに、ウクライナの主権と領土を守るためには「鉄壁の安全保障が必要だ」と指摘。米国が保証を提供する用意があるとのトランプ氏の発言を歓迎しつつも、「ロシアはウクライナの欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)加盟に拒否権を持つことはできない」とロシア側を牽制した。これは、ウクライナの将来の国際的な統合を巡るロシアの介入を許さないという欧州の強い姿勢を示すものだ。
米ロ首脳会談後に会見するロシアのプーチン大統領とトランプ米大統領の様子。ウクライナ情勢の議論に関心が高まる。
各国首脳の反応に見る相違点と警戒感
米ロ首脳会談の結果に対する欧州各国の首脳の受け止め方には、依然として差異が見られた。ウクライナの頭越しに不利な合意が成立しなかったことに安堵する声がある一方で、ロシアの今後の出方に対し引き続き警戒すべきだとの意見も根強い。
イタリアのメローニ首相は、自身のX(旧ツイッター)に「ウクライナ和平に関する協議に、かすかな希望が開けてきた」と投稿し、対話の進展に期待感を示した。これに対し、フランスのマクロン大統領は「ロシアが自らの約束を守らないという傾向から教訓を得ることが重要だ」と強調。過去の経験からロシアへの不信感をにじませ、警戒を怠らない姿勢を強調した。
英国のスターマー首相は声明で、「プーチンが残虐な攻撃をやめない限り、さらなる制裁を含む方策を通じて彼の戦争組織を締め付け続ける」と述べ、ロシアへの圧力を緩めない方針を改めて警告した。一方、ロシアに融和的な姿勢を見せるハンガリーのオルバン首相はXで、緊張関係にあった二つの核大国の首脳会談が実現したことで「きょうの世界はきのうより安全になった」と主張し、対話の実現そのものを評価した。
まとめ
今回の米ロ首脳会談は、ウクライナ問題の即時解決には至らなかったものの、国際社会における対話の重要性と、ウクライナの主権に対する国際的な支持を再確認する機会となった。しかし、欧州各国首脳の反応に見られるように、ロシアへの対応や平和への道のりについては、依然として様々な思惑と警戒感が混在している。公正で持続的な平和の実現には、今後もウクライナの主権と領土保全を最優先しつつ、国際社会が一致団結して外交努力を続けることが不可欠となるだろう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース. (2025年8月16日). 米ロ会談後、欧州は安堵と警戒 ウクライナ主権尊重を強調―各国首脳. Source link