ロシアの雇い兵組織「ワグネル」が刑務所で募集 動画が流出
ロシアの雇い兵集団「ワグネル」のトップが、ウクライナでの戦争に参加させるため、国内の刑務所で雇い兵を募集している動画が流出した。
流出した動画では、ワグネル最高幹部のエフゲニー・プリゴジン氏が受刑者に対し、ワグネルで6カ月働けば自由になると説明している。ワグネルは、2014年のロシアによるクリミア半島併合でも雇い兵を送り込んでいたとされている。
プリゴジン氏は、この件について正当性を主張。受刑者を戦地に送りたくない人は、代わりに自分の子供を戦争に出すべきだと話した。
動画が拡散された後、プリゴジン氏はソーシャルメディアに声明を投稿。もし自分が服役中なら「母国への借りを返す」ためにワグネルに参加できることを「夢見る」だろうと話した。
また、雇い兵や受刑者を戦地に送るべきではないという人々に向け、「民兵組織と受刑者か、自分の子供たちか、そのいずれかだ。選ぶのはあなた自身だ」と語りかけた。
一方でこの声明では、問題の動画に直接言及せず、本物だとも認めていない。
イギリス国防省は、ロシアが受刑者を兵士として募集していることについて、同国の歩兵隊が「著しく」欠員になっていることを示していると指摘した。
■BBCが動画を検証
BBCは検証の結果、この動画を本物と判断。ロシアが受刑者を雇用して兵士の増員を行っているという、長らくの憶測を決定づけるものとなった。
ロシアには、受刑者を軍務や民兵組織への参加と引き換えに自由にできるという法律はない。しかしプリゴジン氏は動画の中で、ワグネルで働けば「誰も格子の内側に戻らなくて済む」と話している。
プリゴジン氏は受刑者たちに「6カ月働けば自由だ」と説明した一方、脱走について警告。「ウクライナに到着してから気が変わった場合、我々が処刑する」と述べた。
動画は、刑務所の運動場で撮影されたとみられる。いつ、誰が撮影したのか、どのように流出したかは分かっていない。
BBCは、この動画がロシア中部のマリ・エル共和国で撮影されたと特定した。また、顔認証ツールで、受刑者に話している人物をプリゴジン氏だと特定し、複数のソースで確認をとった。
BBCは先に、プリゴジン氏とワグネルの関連についても特定してきた。「プーチンのシェフ」の異名をもつプリゴジン氏は、ケータリング事業を通してウラジーミル・プーチン大統領と軍を長年助けてきたとされ、西側の制裁対象となっている。
プーチン氏の関係者はこれまで、ワグネルとのかかわりを否定している。
しかし流出した動画でプリゴジン氏は、自分は「民間軍事会社の代表だ」、「名前を聞いたことがあるかもしれない……ワグネル・グループだ」と受刑者たちに話している。
ワグネルは、シリア、リビア、マリ、中央アフリカの各国でも展開している。
(英語記事 Wagner boss: It’s prisoners fighting, or your children )
(c) BBC News