客足が低調なカジノが入るマカオのホテル(10日)
(写真:読売新聞)
世界一のカジノ収入を誇ったマカオで、新型コロナウイルス禍の打撃に加え、習近平(シージンピン)政権が進める「反腐敗」が足かせとなり、カジノ産業の隆盛を取り戻すことは困難との見方が強まっている。マネーロンダリング(資金洗浄)の撲滅を図る当局の締め付けで、カジノの大きな収入源だった富裕層が大金をつぎ込むVIPルームが軒並み閉鎖されたためだ。(マカオ 吉岡みゆき、写真も)
客を待つディーラーたちがずらりと並び、ぼんやりと宙を見つめる。客で盛り上がるバカラやルーレットの台は一部だけ。昼間はガラガラのカジノも少なくない。これがマカオの日常風景となりつつある。
マカオ政府の統計によると、コロナ禍の影響で今年1~6月にマカオに入境した旅客数は346万人で、コロナ前の2019年同期比83%減だ。21年のカジノ収入は、868億パタカ(約1兆5400億円)と、19年の水準の3割にとどまった。今年4~6月の失業率は06年以来最高の3・7%となった。
コロナ禍に追い打ちをかけるのが、富裕層に貸し付けなどを行う仲介業者の取り締まりだ。昨年11月、仲介業最大手・太陽城(サンシティ)創業者の周●華氏が越境賭博などの容疑で逮捕されて廃業し、その他の業者も営業停止した。今月始まった公判で、周氏は否認しているが、検察側は周氏らが215億香港ドル(約3962億円)の不当な利益を得たと主張している。(●は「火」へんに「卓」)
仲介業者が運営するVIPルームを利用する富裕層の中には、一晩で20億円相当負ける客もいる。こうしたVIP客からの収入が、カジノ収入の半分以上を占めていた。
VIP客には、汚職で蓄財した中国本土の地方官僚も含まれる。仲介業者を巡ってはかねて、カジノが禁止されている中国本土から富裕層を誘客し、不正資金の洗浄を手助けしているとの見方があり、当局の取り締まり強化で一掃された。
マカオ大学の蕭志成副教授は「コロナが収束してもVIP客は戻らず、カジノ収入は1900億パタカ程度までしか回復しない」との見通しを示した。