ウクライナのゼレンスキー大統領=ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
ロシアによるウクライナ侵略で、露国防省が1日に東部ドネツク州の鉄道交通の要衝リマンから露軍部隊を「より有利な防衛線」まで撤退させると発表したことを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日のビデオ声明で、リマンの事実上の奪還を宣言した。同氏は「この1週間でドンバスにひるがえるウクライナ国旗が増えた。次の1週間でさらに増えるだろう」と述べ、反攻を加速させる意思を表明した。
【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地
リマンはウクライナ軍が1日までに包囲をほぼ完了したと発表していた。露軍は東部ハリコフ州に続き、全域の制圧を目指す東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)でも後退に追い込まれた形で、苦境が改めて顕著となった。
リマン包囲戦でウクライナ軍は、露軍部隊の脱出路となる道路1本をあえて封鎖せず残した。露軍を追いつめて徹底抗戦を決断させるよりも、撤退中の露軍に砲撃などを加えた方が自軍の損害がより軽微になると判断したとみられている。
実際、英国防省は2日、「露軍はリマン撤退時に唯一残った脱出路を使用せざるを得ず、大損害を受けた」と分析。戦略上の要衝であるリマンの喪失で、露軍は目標達成がいっそう困難になると予測した。
英国防省はさらに、リマンはプーチン露大統領がロシア編入を宣言したウクライナ4州のうちの一つであるドネツク州に位置するとし、直後のリマンの喪失は「ロシアにとって政治的にも大きな後退だ」とした。