ウクライナのゼレンスキー大統領(右)とロシアのプーチン大統領
ロシア軍はすぐウクライナ政権を陥落できる――。そんな楽観をロシアのプーチン大統領は抱き、侵攻に踏み切ったとされる。
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念頭には、ウクライナに作ったスパイ網もあったのではないか。そううかがわせる調査報道をロイター通信が発表した(7月28日)。
ロイター通信によると、クレムリン(ロシア大統領府)は侵攻がスムーズにいくよう、そのはるか前からスパイ網を築いていた。ダニーロフ・ウクライナ国家安全保障会議書記は記事の中で、次のように述べた。
「外敵のほかに、残念ながら内なる敵がいる。侵攻開始の時点で、ロシアはウクライナの軍や治安組織、司法界にスパイたちを持っていた」
ウクライナ北部のチェルノブイリ原発の場合、侵攻初日の2月24日午後、ロシア軍が2時間で制圧した。169人のウクライナ国家警備隊は戦うことなく武器を置いた。
すでに昨年、クレムリンはチェルノブイリ原発にスパイを送り込んでおり、その一人がこの日、国家警備隊部隊長に出動を止めるよう求めたという。
また、ウクライナ国家捜査局はインテリジェンス部門の職員を「チェルノブイリの保安上の秘密をもらした」容疑で捜査しているという。
結局、北部におけるロシアの作戦は失敗した。チェルノブイリ原発は3月末、ロシア軍がキーウ周辺から撤退するとともに解放された。
一方、国家レベルでは、プーチン大統領と親しいウクライナの政治家メドベチュク氏が通話を暗号化できる携帯電話を持ち、クレムリンに情報提供した、とロイター通信が報じた。
しかし、メドベチュク氏も4月、反逆罪でウクライナ当局に逮捕された。
スパイを使ったロシアの激しい攻防は、現在注目が集まっているウクライナ南部でも起きていたようだ。
ウクライナ南部は2、3月、クリミアを拠点とするロシア軍によってすぐさま占領された。ウクライナ軍の抵抗が少なく、ロシアの戦車、装甲車の進軍があまりにも早かった。ウクライナメディアの多くが疑問を投げかけた。
これについて最近、ウクライナ諜報組織の幹部がロシアに寝返り、ロシア侵攻の情報を味方に伝えなかった、との疑いが浮上している。
容疑者はウクライナ保安庁(SBU)のクリミア支局のトップ、クリニチ氏で、ウクライナ国家捜査局が7月16日に逮捕した。SBUは公式サイトで「国家機密をロシアに流した」と発表した。