ロシアのショイグ国防相=AP
【ワルシャワ=上地洋実、ワシントン=蒔田一彦】ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は23日、米英仏トルコの国防相と個別に電話会談した。ショイグ氏は放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」をウクライナが「挑発に使う可能性がある」と一方的に主張した。会談後、米英仏3か国の外相は共同声明で「見え透いたウソの主張を拒絶する」とショイグ氏を非難した。
米英仏外相は「世界は(ロシアが)この主張を戦争拡大の口実として利用するいかなる試みも見抜くだろう」と指摘した。ウクライナのドミトロ・クレバ外相は米国のブリンケン国務長官と電話会談した際、ロシアが攻撃を「自作自演」する準備の一環との見方を示した。
会談はいずれもロシア側が要請しており、ショイグ氏にとっては異例の外交攻勢となる。米政策研究機関「戦争研究所」は23日、ロシアが一方的に併合した南部ヘルソン州などで苦戦が続く中、「米欧によるウクライナへの軍事支援を減速させようとする狙いがある」との見方を示した。
ロシアは侵略開始前から、ウクライナが米欧の支援で「生物・化学兵器の開発を進めている」との一方的な主張を展開してきたが、最近は国際的なアピールを抑えていた。24日で侵略開始から8か月となり、ロシアがウクライナや米欧への揺さぶりを再び強化している可能性がある。
一方、ウクライナのエネルギー相は23日、露軍によるエネルギー施設に対する集中攻撃で国内の風力発電施設の約90%、太陽光発電施設の約50%が破壊されたことを明らかにした。ウクライナのインフラ省は23日、黒海経由の同国産穀物の輸出量がロシアの妨害で「輸出能力の25~30%に低下している」と指摘した。