ショルツ独首相、習中国主席と会談 ロシアへの働きかけ求める


ショルツ独首相、習中国主席と会談 ロシアへの働きかけ求める

ショルツ独首相、習中国主席と会談 ロシアへの働きかけ求める

新型コロナウイルスの世界的な大流行が発生して以降、ヨーロッパの指導者が北京を訪れるのは初めて。習氏が先月開催された共産党大会で権力の掌握を強めてから、欧州首脳が習氏と会談するもの初めてだ。

ショルツ氏は、ロシアの核による威嚇が「無責任かつ非常に危険」だという認識で両国は一致したと述べた。

習氏はこれまで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による侵略行為を非難していない。

中国の報道によると習氏は、危機を平和的に終わらせるよう国際社会が支援し、核兵器の使用や威嚇に反対すべきだと述べたという。

中国外務省は、習氏が「無責任」「非常に危険」という言葉を使ったとは説明していない。

ショルツ氏と習氏は今回、ウクライナでの戦争、世界の食料とエネルギーの安全保障、気候変動、世界的な感染流行などについて、話し合い続けることで合意した。

台湾に関しては、ショルツ氏は従来どおり、現状のいかなる変更も平和的かつ相互の合意に基づかなくてはならないとするドイツの見解を繰り返した。人権については、特に新疆地区の少数民族について保護の必要があると述べた。

■欧州で懸念広がる

ショルツ氏の今回の訪中は、滞在時間がわずか11時間。現時点での訪中の是非は、ドイツと欧州各国で懸念を呼んでいる。

中国共産党大会が終わってまもないタイミングでもあるだけに、権威主義を強める習氏の国内評価を高める材料にされかねないと、懸念されている。

これについて、ジェニー・ヒルBBCベルリン特派員は、ショルツ氏は、前首相のアンゲラ・メルケル氏と同様、世界の問題は中国との協力することでのみ解決できるという考えの持ち主だと指摘。首相は、直接会うことで、双方が強く対立する問題でも話し合いが進むと考えているという。

BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長は、ドイツは欧州連合(EU)の中で最も経済力と影響力をもつ国であり、その言動は重要だと指摘。

ショルツ氏の今回の訪中は、発表はされたものの、EUの他の国々との調整がなかったため、欧州各国の神経を逆なでしたとアドラー編集長は話す。

ヨーロッパがドイツを筆頭にロシア産ガスへの依存から脱却しようとする中、「ドイツはビジネスの見込みに目がくらみ、中国に近づきすぎているのではないか?」と、欧州で疑問視されているのだと、編集長は言う。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が何年も前から、EUの中国への依存を弱めるよう働きかけてきたこともあり、EUは貿易相手国の多様化は賢明なことだと考えるようになっているが、ショルツ氏はその歩調から外れていると懸念されていると、同編集長は解説した。

<解説> ジェニー・ヒル BBCベルリン特派員

ショルツ首相の前任、アンゲラ・メルケル氏も、中国訪問時には必ずドイツ経済界の幹部を同行した。メルケル氏は「貿易を通じた変化」を政策として追求し、中国やロシアといった国々との関係は、経済的な結びつきを通じて、政治的関係にも影響を与えられると考えていた。

ドイツ経済は長く、安価なロシアのエネルギーに依存してきた。しかし、ウクライナでの戦争によって、ドイツのその戦略の本質的な欠陥があらわになった。そしてかつてはパートナーだった中国のことも、ドイツ政府は今ではライバルとみなしている。

習氏は今回の会談で、ドイツとの「より深い協力」をショルツ氏に求めた。すでにドイツ経済が中国と密接すぎると考える人にとって、これはぞっとする発言だったはずだ。中国が台湾に侵攻したらどうなるのか、そういう人たちは心配している。

すでに100万人以上のドイツ人の雇用が、中国との関係に依存している。

例えば、自動車大手ダイムラーは、製造した車の3割以上を中国で販売している。化学メーカーBASFは、中国南部に新工場を開設したばかりで、年内に100億ユーロ(約1.5兆円)の投資を予定している。

ドイツ政府内で、中国との「デカップリング」(切り離し)を主張する人はほとんどいない。ショルツ首相訪中の前夜、経済界の幹部はこう述べた。「今は中国の陶器を割るべき時ではない。それが唯一のアドバイスだ」と。

とはいえ、ドイツが過度に中国に依存するのを防ぎたいと考えている人は多い。

ショルツ氏には、高度な綱渡りが求められている。ドイツ経済を守りながら、ドイツ企業の利益を最優先しているという非難を避けなくてはならないのだ(そうした非難はここ数カ月でかなり出ている)。

変化する中国にどう対応するか。ショルツ政権にとっては、それが決定的な試練となるかもしれない。

(英語記事 Scholz asks China to press Russia to end its war )

(c) BBC News



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