カンボジア・プレアシアヌーク州シアヌークビルで、警察によって封鎖された中国系カジノ。新型コロナウイルス流行に伴う渡航制限の中、国際犯罪組織の資金源がカジノから詐欺に移行している(2022年9月26日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】不動産業界で働く黄さん(28、仮名)は、これまで何の気苦労もなく快適な暮らしを送ってきたが、今は借金に悩まされている。人身取引の被害者にオンライン詐欺の片棒を担がせる国際犯罪集団の手口に引っかかったのだ。
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中国では、恋愛相手を装った詐欺師に大金をだまし取られる被害が相次いでいる。数週間かけて親交を深めた後で、偽の投資プラットフォームなどの計略に誘い込み、多額の金を引き出す手口は「殺豚盤(豚殺し)」と呼ばれる。東南アジアの犯罪組織が、中国人をはじめとする外国人を誘拐し、同国人を詐欺にかけるよう強要しているとみられている。
■「まさに私のタイプ」
詐欺被害に遭ったことを友人や家族に知られたくないと、匿名でAFPの取材に応じた黄さん。トラブルの発端は昨年、中国の人気求人サイトで履歴書を公開したことだった。
林と名乗る採用担当者から連絡を受けた。趣味が合い、インターネットを介した2人の関係は恋愛に発展した。「まさに私のタイプだった」
子どもの頃に親に捨てられ、貧困からはい上がってきたという入念に練り上げられた林の生い立ちに、黄さんは「共感と同情を覚えた」と語る。
直接会う機会はなかったが、林はビデオ通話を重ね、自分の身分証明書だとするスクリーンショットを送るなどして、黄さんの信頼を得た。
林の勧めに従い、黄さんはまず5万元(約98万円)を偽の投資プラットフォームに投資した。しかし、黄さんが投資への興味を失うと、林は手を変えてきた。
■幾つもの顔を持つ男
昨年11月、黄さんは自宅のある成都(Chengdu)で初めて林と会う約束をした。ところが、約束の日に林は姿を現さなかった。林の弁護士を名乗る人物を含むネット上の知り合いから、上海で林が警察に拘束され、保釈には数千元が必要だと聞かされた。
すぐに保釈されると聞いていたのに、林は不可解な事態に巻き込まれていると主張し、さらに金銭を要求してきた。黄さんによると、乱闘で負傷させてしまった拘置所仲間に賠償しなければならない、汚職警官にわいろを要求されている、看守に殴られたけがの治療代が必要だ、などの理由を並べたという。