陽性 ついにその時が…
新型コロナ検査キットに試薬を落として待つ、ラインが2つ現れた、陽性だ。
特派員として武漢封鎖を目の当たりにし、それから3年間のコロナ禍をこの中国で過ごしてきた私にも、ついにその時がやってきた。
もしかしたら市中感染がかなり拡がっているのではないか。
北京でフェーズが変わったのではないかと感じたきっかけは、一週間前。これまですぐに反映されてきた、定期的に市中で受けるPCR検査の結果が、いつまでたっても私のアプリに反映されなくなったことだ。その時、私は嫌な予感がしていた。
■結果がアプリに反映されない…検査体制の崩壊か
検査結果がアプリに更新されない…
中国では10人分の検体をまとめてPCR検査する10人プール方式を採用し、数十万人もの住民を一気に検査することもできる大規模な検査体制で感染者を探り出し、強制的に隔離することで感染をおさえてきた。
1カ月前、ゼロコロナ政策の真っただ中だった北京では、10人プール方式で陽性が出るとその10人全員に7日間の自宅隔離を課していた。
2週間前、その政策が少し緩和され、10人全員をすぐ1人ずつ検査し、陰性ならすぐに解放されるようになった。しかし、その10人プール方式で陽性となる人が私の身近で明らかに増えてきた。
そして先週、私がPCR検査を受けても翌日までに検査結果が健康コードのアプリに反映されなくなる現象が頻発しだした。こんなことは今まで一度もなかったことだ。当初は、個人情報の入力ミスなど検査会社の処理の問題かと私は思っていた。10人プール方式で当たったとしたら、すぐに連絡が来るはずだと思っていたからだ。
しかし、現実は違った。周りの知人に聞いてみると同じように検査結果がアプリに反映されないという。どうやらすぐに反映される方が稀であることもわかってきた。
私はここで異様な違和感を覚えた。
・・・陽性者どころか陽性候補者もまとめて、見つけ次第すぐに隔離してきたのがゼロコロナの中国なのに、10人プール方式で陽性が出ても連絡さえしない、いやできないのではないか。陽性件数が検査体制の処理能力を超えたのかもしれない、もしくは、政策が変わって、陽性者を追いかけることをやめたのか…もしそうなら・・・
この違和感が確信に変わったのは、身近な知人に感染者が続出し始めたことだ。
私は3年間コロナ禍の中国で過ごしてきたが、これまで日本人の知人が感染した話はほとんど聞かなかった。しかしわずか1週間でその人数は10人を超えた。ほかに、陽性ではないが発熱などの症状が出た人も多数いた。