米上院軍事委員会、バージニア級の豪州提供を止めるよう大統領に要請

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上院軍事委員会のメンバーはバイデン大統領に宛てた書簡の中で「米英豪の安全保障協定(AUKUS)が米原潜戦力をリスクに晒さす危険がある」と訴えており、シンプルに言えば「米産業界が建造したバージニア級原潜を豪州に提供するな」と要求している。

限られた需要に合わせて簡単に伸びたり縮んだり出来ない防衛産業基盤、米英の能力を犠牲にして豪州が原潜を取得すればゼロサムゲームに陥る

アタック級潜水艦から原潜導入に方針を転換したモリソン政権は「コリンズ級潜水艦から原潜への移行」を目指していたが原潜の国内建造には時間がかかり、米海軍も英海軍にも豪州に売却もしくはリースできるほど原潜に余裕がなく、米英には豪州向けの原潜を新たに建造する余剰能力がないことも濃厚で「コリンズ級潜水艦から原潜への直接移行は無謀だ」と野党から批判を浴びていた。

米上院軍事委員会、バージニア級の豪州提供を止めるよう大統領に要請

出典:Public domain コリンズ級潜水艦

さらに昨年5月の総選挙で労働党が勝利、アルバニージー政権は2012年に策定された国防戦略が「急速な中国軍の台頭」や「台湾海峡の軍事的対立」をカバーしていないため見直しを指示、米英のどちらから原潜を導入するのか、コリンズ級から原潜に直行するのか、コリンズ級から原潜に移行するギャップをカバーするため通常動力型潜水艦を取得するのか「2023年3月に発表する」と主張しているが、米豪閣僚協議でオースティン国防長官が「コリンズ級潜水艦から原潜への移行にギャップを生じさせない」と約束したため米議会で安全保障分野を担当する議員は相次いで懸念を表明。

シーパワー・戦力投射小委員会(下院軍事委員会)のロブ・ウイットマン議員は「豪州が独自に原潜を建造できるようになるまで米国がロサンゼルス級かバージニア級を提供すればいいという話もあるが、米国の原潜建造に余裕はないので絶対にあり得ない」と主張、さらに上院軍事委員会のジャック・リード議員とジム・インホフ議員はバイデン大統領に宛てた書簡の中で「米英豪の安全保障協定(AUKUS)が米原潜戦力をリスクに晒さす危険がある」と訴えている。

米上院軍事委員会、バージニア級の豪州提供を止めるよう大統領に要請

出典:public domain

バージニア級原潜の工期は当初約60ヶ月(建造・艤装・引き渡しにかかる期間の合計)だったが、船体中央にバージニア・ペイロード・モジュールを挿入したブロックVはブロックIよりも工数が大幅に増加、さらに建造現場に導入した新型コロナ感染対策の影響でブロックVの工期は70ヶ月台後半になっており、2017年2月に建造を開始したバージニア級原潜33番艦オレゴンに至っては2019年10月に予定されていた船体工事完了を2年以上オーバーしても工事が続いている状況だ。

米造船業界やサプライヤーは何とか従業員を増やして工期短縮(70ヶ月台後半→67ヶ月)を模索している最中だが、あらゆる分野で人手不足に直面している米国では「セキュリティ審査をパスした民間人」の確保が容易ではなく、何とか確保できた従業員もバージニア級ではなく建造が開始されたコロンビア級原潜の建造に投入されており、ここに原潜の定期メンテナンス、船首ドームを大きく損傷したコネチカットの修理などが加わるためGDとNNSが直面するストレスは計り知れない。

米上院軍事委員会、バージニア級の豪州提供を止めるよう大統領に要請

出典:Public Domain 建造中のバージニア級原潜

さらにGDとNNSには「オーストラリアの原潜建造を支援する」という任務まで追加される見込みで、米海軍の保有するバージニア級もしくはロサンゼルス級を豪州に提供しても「ゼロサムゲームにしからない」と上院軍事委員会の議員は主張しているのだ。

つまりAUKUSの枠組みで豪州が原潜を取得すれば「インド太平洋地域で運用される原潜戦力の増強」もしくは「豪海軍の原潜が米海軍が負担する一部任務を肩代わりする」というバラ色の未来が提示されていたのだが、自国向けにフィットした米英の原潜能力から豪州に原潜を提供すると「インド太平洋地域で運用される原潜戦力の総数は増加するのではなく±0=ゼロサムゲームに陥る」という意味で、仮に米海軍向けのバージニア級を豪州に提供すれば「米国の制御下にある原潜が減少する=安全保障におけるリスクになる」と両議員は懸念している。

米上院軍事委員会、バージニア級の豪州提供を止めるよう大統領に要請

出典:Public Domain

豪州のアルバニージー首相は「上院議員がバイデン大統領に宛てた書簡=AUKUSの枠組みが逆風に晒されているという見方」に反応して「オーストラリア、米国、英国は我々の原潜導入計画にコミットしている」とメディアに訴えたが、ホワイトハウスが政治的にバージニア級提供を決断しても議会の承諾が得られないまま実行に移すのは限りなく難しいため、コリンズ級から国内建造した原潜に移行するギャップを埋める「通常動力型潜水艦を取得」が最も現実的なプランと言えるだろう。

既に豪州が通常動力型潜水艦を取得する可能性にフランスと韓国が売り込みを開始しているため、3月以降に豪州の潜水艦需要を巡る戦いが正式に勃発するかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo courtesy of Newport News Shipbuilding/Released

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