総務省が超高速で計算ができる量子コンピューターの実用化を見据えた暗号の新規格について検討を始めたことが2日、分かった。このほど立ち上げた非公開の有識者会議で協議し、令和5(2023)年ごろをめどに新規格を策定する。次世代技術の中核とされる量子コンピューターを使えば現在用いられているパスワードなどが簡単に解かれ、大規模なサイバー攻撃につながる恐れがある。
有識者会議は年内に論点を整理し、暗号技術の安全性を評価する上位の検討会が来年3月に報告書にまとめる。新規格には行政のデジタル化に伴って政府が導入する機器で使う暗号の安全基準を盛り込む計画。政府の推奨基準を策定することで、同じく議論が進む米国などを見据え、日本として民間企業の対応も促す。
有識者会議は暗号研究を専門とする横浜国立大大学院の松本勉教授が座長。量子コンピューターの研究者やメーカー、暗号技術を利用する日銀などが参加している。
暗号は複雑な数式を用いて作成される。コンピューターを用いても解くのに数年かかるほど複雑さを高めることで、安全性を保っている。
しかし世界で開発が進む量子コンピューターは複数の演算を同時に高速処置することが可能で、1つの演算を高速で処理する現在のコンピューターを大きく上回る計算能力を持つようになるとされる。実用化されれば現在の暗号は簡単に解読できるようになるとみられる。
第5世代(5G)移動通信システムで、あらゆるモノがインターネットでつながるモノのインターネット(IoT)の実用化が進めば、サイバー攻撃の危険は飛躍的に高まる。自動運転などでは、サイバーセキュリティーがサービスの安全性に直結するだけに、次世代技術に備えた暗号の確立が急務となっている。
量子コンピューターは理化学研究所がNTTやNEC、東芝などと共同で開発に乗り出している。米グーグルやマイクロソフト、IBMも積極的に投資している。