数十年前からグローバル化していた日本アニメ
くわえタバコがトレードマーク 画像は『ONE PIECE Log Collection “NAVARON”』DVD(エイベックス・ピクチャーズ)
幅広いテーマと自由な表現が特徴の日本アニメ。しかし海外では規制の壁にぶつかって、修正された作品が放送されたことがありました。
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この記事では海外で規制の対象となった表現や設定について紹介します。
●タバコがキャンディーに!
ひとつ目の規制はタバコです。アメリカではタバコの規制が厳しく、子供向けの番組では小道具として使うことも許されません。アメリカにおける放送に関する監督機関、Federal Communications Commission(FCC) ではタバコは「薬物使用の制限」の範疇に含まれています。
そのためアメリカ版の『ワンピース』では、サンジのタバコがチュッパチャップスのような棒つきキャンディーに改変されました。キャンディーをくわえて戦うサンジ、当然、勝利後の一服シーンはカットされます。
しかしこの規制で最も大きな影響を受けたのは「もくもくの実」の能力者であるスモーカー大佐です。彼のトレードマークの葉巻は削除され、口から煙を吐く「チェイサー大佐」に改変されました。ふたりともキャラクターイメージが大きく異なりますね。
●シンジ、キスしよっか?
ふたつ目の規制は性愛に関するものです。中国では性愛の規制が厳しく、キスシーンの放送が禁止されています。そのため『新世紀エヴァンゲリオン』が『天鷹戦士』として放送された際、15話にあったアスカとシンジのキスシーンが変更されました。
キスの代わりになんとアスカは「退屈だから歌を歌いましょ」というのです。あのシーンは寂しがり屋のアスカの内面の一端が描かれる重要なシーンなのですが、改変によって意味不明なものになってしまいました。この他にも多くの修正がある『天鷹戦士』は中国のオタクの間で黒歴史として知られています。
『ポケモン』は大好きでも「進化」は禁止?
ヒトカゲはリザードやリザードンに進化する定番ポケモン 『ポケットモンスター しっぽみてみて めちゃでか ぬいぐるみ ヒトカゲ 』 (バンプレスト)
三つ目は進化論です。日本ではごく当たり前に現時点における「科学的事実」として扱われている進化論ですが、お国柄によっては子供に教えたり、放送したりすること自体が禁止されています。
そんな国のひとつが中東のサウジアラビアです。同国で放送された『ポケモン』では進化シーンを「これまで一緒に旅をしてきたポケモンが友達を連れてきた」という演出に改変しています。これなら新しいポケモンが登場してもおかしくないですね。
しかしこれまで一緒に旅をしてきた大事なポケモンはどこへ行ってしまったのでしょうか? まるで新しい友達ポケモンと入れ替わったかのような気が…。
進化を新しい友達ポケモンとした苦肉の策ともいえる改変は、サウジアラビアの多くの子供たちを困惑させました。
●僕は北斗高校のケンシロウです
最後の規制は暴力です。日本を含むほとんど全ての国で制限されますが、その程度にはグラデーションがあります。
例えばマンガ好きで知られるフランスにおいては『北斗の拳』がTV放送された際、あまりにも暴力的過ぎるという批判を受け、ギャグアニメに変更されてしまいました。暴力的とみなされるシーンがカットされてしまったら、格闘で思想をぶつけ合う『北斗の拳』は物語が成り立ちません。
その結果、ケンシロウは北斗神拳伝承者ではなく、北斗高校の学生になり、シンは南斗高校の教師になるなど、設定からセリフまでほぼ全てが別物になっています。
これらの例は規制による改変の一部です。改変された作品をオリジナルと思って視聴していた海外アニメファンは、大人になって本当のオリジナルを知った時に大きなショックを受けるとのこと。しかし同時に長年のもやもやが晴れて納得するようです。
アニメの世界同時配信が当たり前になった現代ではこのようなケースはまず発生しませんし、SNSですぐに誤解が解けるでしょう。アニメのオリジナル表現問題は、今となっては海外の古参アニメファンだけに共通する貴重な思い出なのかも知れません。
レトロ@長谷部 耕平